小説

7 決戦

2022年10月14日

「がうおおおおおおおん」

 氷のダンジョン最奥にて待ち構えていたのは、ボスモンスター・クリスタルレオ。

 竜のような羽と尾を持った、巨大な白いライオンのようなモンスター。たてがみ、そして身体の至る所に鎧のような氷が張り付いている。それはある一定のダメージを与えると破壊できるが、それまではクリスタルレオを守る装甲の役割を果たしている。さらに周囲には6枚の浮遊クリスタルが輪になって浮かんでおり、主であるクリスタルレオを守っている。

「まずは私が近接戦闘を仕掛けまする。守りは不要にて」

 小太刀を構えたほろびが一人先行。

「滅流忍法・影分身!!」

 そして、忍者スキルの能力によって実体のない分身を数体生成し、敵の攻撃を分散させつつボスに接近。だが斬りかかった滅を、浮遊クリスタルが阻む。

 だが、それは滅の計算通りだった。

「滅流忍法一ノ太刀・絡繰崩からくりくずし!!」

 破壊者のスキル【ギミックブレイク】により、浮遊クリスタルを一撃で粉砕する。

「がううううあああ」

 それに怒ったのか、ボスは滅をターゲットにスキル【絶対零度】を使用。はためかせた翼から、猛吹雪が発生し、滅を襲う。

「滅流忍法・変わり身の術!」

 だがその攻撃は突如現れた木の人形が引き受ける。そして滅本体は、ボスの裏に回り込む。

「滅流忍法二ノ太刀・五所蹂躙斬ごところじゅうりんざん!」

 そしてスキル【ウィークアタック】で、ボスの背面の氷を砕いた。

「ヒュ~。もうあの忍者一人でいいんじゃないかな?」

 遠くから見守るハゼルはそう呟いた。

「ダメですよ。破壊者はボスの部位破壊やギミック崩しはできますけど、代わりに火力が低いですから……やはりここは、予定通りに行かないと」

 職業・破壊者。

 対人においては相手プレイヤーの装備の破壊やスキルを封じる能力を持つ一方、それ以外においては、主にボス戦にて真価を発揮する職業である。
 フィールドギミックの破壊や、ボスの体の一部を破壊して攻撃能力や防御能力を下げたりすることに特化している。
 ボス攻略において、居てくれると攻略が楽になる人材なのだ。やりたがる人が少ないだけで。

「がうががあああああ」
「勝機にて――滅流忍法三ノ太刀・脳天落とし!」
「ががが……がうがああああ」

 二度目の【ウィークアタック】がボスの頭部にヒットする。クリスタルレオの氷のたてがみが崩壊し、怒り狂った雄叫びが部屋に響き渡る。

「むっ!?」

 ボスはスキル【氷分身】を発動。3体のクリスタルレオと同じ姿、ステータスを持つトークンが現れる。
 そしてトークン三体は滅ではなく、ミュウたちの方へと駆けだした。

「こここ、こっちに来たわ!?」

「ここは僕に任せて……【デコイ】……そして――【ルミナスエターナル】」

 小学生男子のセカンドが前にでて、無敵を貼りつつ敵の攻撃を自分に集中させる。

 セカンドとサードの職業【守護者】は守りと回復に特化した職業。一人でも守りの要となれる守護者が二人居れば、回復と守りの二手に分かれ、それぞれに専念できる。まさに鉄壁の守りを実現できるだろう。

「今のうちに攻撃に移るか。行くよイヌコロ――進化召喚」
「わっふ!」

 ハゼルのかけ声とともに、イヌコロが光を纏う。そして、上位召喚獣ワーフェンリルが姿を現した。

「フン、出番か」

 全身ライダースーツに身を包んだ二足歩行の獣人ワーフェンリルは、少し格好つけた口調で言いながら、敵を見据える。

「おう、よろしく頼むぜ相棒」
「フッ、任せろ」

 ワーフェンリルは氷分身の一体と戦闘を開始した。

「じゃあ、こっちは……」

 攻撃を引き受けたセカンドが残り二体の氷分身にボコボコと殴られている。ヒメが槍で攻撃しているが、流石にレベルのせいか、まだ氷人形を倒すだけのダメージは与えられないようだ。

 ミュウはサモンソードのトリガーを連打する。

『チャージ』『チャチャチャチャチャチャージ』
『フルチャージ! ファイナルアタック【ファイヤードラゴン】!!』

 そして、剣を振りかぶる。上級召喚獣ファイヤードラゴンを模した炎のオーラが放たれ、氷分身の一体を包み込み、撃破する。

「やった一撃! この剣と召喚石があれば、私でもやれる!」

 ミュウはセットしていたファイヤードラゴンの召喚石を外し、次の召喚石を取り出した。一度サモンソードにセットした召喚石は「召喚された」扱いとなるため、再使用まで24時間かかるのだ。

 だが滅から借り受けた召喚石はまだ大量に残っているので問題ない。新たなファイヤードラゴンの召喚石をセットし、トリガーを連打する。

「もうちょっと耐えててね、小学生ズ」

 だが守りを引き受ける小学生たちは、揉めていた。

「そろそろHPがキツい。サード、回復を」
「……」
「サード? おいサード、回復くれ、頼む」

 デコイで攻撃を受けてくれていたセカンドの回復要請を無視して、サードは対してダメージの無かったヒメを回復。

「いいけど。その代わり、お前にはヒメちゃんを諦めて貰おうか?」
「な、なんだと!?」
「ヒメちゃんから手を引けって言ってるんだよこのウンコ野郎!」
「誰が手を引くか! ヒメちゃんは僕のものだ!」

 小学生たちが喧嘩を始めた。

「後でやれやっ!!」

 ミュウが叫ぶが、小学生たちは聞いていない。

「そ、そうだ……ヒメちゃん。お願いあの二人を止めてよ」

「え、嫌よ。だって私、この醜い争いが楽しくて、この子たちをキープしてるんですもの」

「さ、最悪だー!?」

「ほら、どうしたの? もっとよもっと。男共、私を巡って争いなさい! 勝ったら頭撫でてあげるわよ」

「「うおおおおおおおお」」

「煽るなや!!」

(このヒメって子……悪女キャラでもゲス中のゲスしかやらないようなことをこの歳で……)

 こうなったら自分がやるしかねぇと、再びサモンソードを振り下ろし、二体目の氷分身を撃破した。

「ハゼルさんは!?」

 ミュウが振り返った丁度そのとき、ハゼルのワーフェンリルと最後の氷分身が相打ちとなって消滅した。
 ワーフェンリルは強力な召喚獣だが、ハゼルのものはスキルがまだ一つしか使えない状態だった。そのため、分身相手にもかなり苦戦してしまったのだ。

「ぐぐぐ……がおんおおおおお」

 氷分身の破壊でさらに怒ったクリスタルレオ本体は、飛翔する。そして、地面に居るミュウたちに狙いを定める。

「まずい……最強攻撃が来ますよ!」

「サードくんかセカンドくん……どっちでもいいから範囲防御を」

「「今それどころじゃないんだよ!!」」

「何しに来たんだテメーら!?」

 思わずミュウの口調が荒くなる。

「こうなれば致し方なし。滅流忍法・傀儡の術!」

「わっ……なんだ!?」

 滅が使用したスキル忍者の能力最後のひとつ、傀儡の術は、味方プレイヤーのスキルを強制的に発動させることができる能力である。
 これにより、揉めていた小学生ズのスキル【ルミナスエターナル】を発動させたのだ。

 全員がスキルにより守られるのと同時に、ボスの最強攻撃【ダイヤモンドダストバースト】が放たれる。口から放たれた冷気の攻撃は地面に着弾すると、雪崩のようになって周囲を襲う。

 もしまともに食らったら、ひとたまりも無いだろう。

「ミュウさん、今です!」
「決めろみゅうみゅう!」

「はい……! はあああああ!」

 ミュウは再びファイヤードラゴンをセットしたサモンソードを振るう。独特な音声と共に炎の竜のオーラが飛び出し、大技直後のクリスタルレオを襲った。

「がううがああああああ」

 そして、滅が累積させたダメージと相まって、翼が消滅。空中に居たクリスタルレオは地面に落下すると、起き上がれずにもがき苦しむ。

「決戦の時来たれり! 今こそ集中攻撃にて!」

 滅が叫ぶ。

「ほら、いつまでも喧嘩してないで行くよ」

 守護者とはいえ、殴ればダメージは与えられる。ミュウが呼びかけるが、しかし小学生男子二人は今だに争っている。

「「今はそれどころと違う!!」」

 どうやらミュウのこともボスのことも眼中にないようだった。そんな男子たちに、ボスの方へと走りながら、ハゼルが叫ぶ。

「おーい男子どもー! クリスタルレオを倒せたらヒメちゃんが好きなところにチューしてくれるってよ!」

「「待たせたな今行くぜえええええええええ!!」」

 一瞬で争いを止め、ボスに向かって走り出す男子たち。

「ま、待ってよぉぉ! ヒメそんなこと一言も言ってないよ~」

 と言いながら、ヒメとミュウがボスの所にたどり着く。

 そして、無防備なボスに6人で一斉攻撃。

 こうして、クリスタルレオを突破することに成功した。

8 結末

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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