【旧】お前のような初心者がいるか!

【旧】123話 全速前進DA!

2022年12月10日

「……スイー!! ほら、見てよお姉ちゃん!」

 沼地を歩くのを嫌がったレンマは、新しいアイディアを閃いた。レンマはダブルアーマーのゴリラを足場に、沼地フィールドを移動する。鎧として独自に稼働するゴリラならば、沼地の効果を受けずに動くことができるのだ。

 ゴリラの背に乗って水面を移動するレンマの姿は実に優雅だった。まぁ見えない水面下では、ゴリラが四つん這いで必死に動いているのだが。

「いいなぁ……私も何かできないかしら」

 沼地をせっせと歩くヨハンは自分もなんとかして楽をできないかと考えた。先ほど試したが、メテオバードでは低空飛行ができず探索にならないし、バスタービートルでは沼地の移動が牛歩過ぎて駄目だったのだ。

「あ……そういえば」

 その時、ヨハンの脳裏に、先日のボス戦の光景が思い浮かんだ。觔斗雲に乗ってホバー移動するゴクウの姿が。

「いいじゃない! あれなら水面をビューと移動できるわ!」

 そう考えたヨハンは早速スキルを発動させる。

「スキル発動――【觔斗雲】!」

 ヨハンがスキルを発動すると、人一人が座れそうな程の大きさの觔斗雲が出現する。雲といいつつも、その見た目は綿でできたクッションのようである。

「……おお、觔斗雲だ!」

 興奮した様子のレンマに「見てて!」とサムズアップしたヨハン。意気揚々と雲に飛び乗る。

「な……っ!?」

 だが、ヨハンの体は雲をすり抜け、沼の中に落下した。尻餅をついたような体勢でずぶ濡れになったヨハンはしばし考える。

「な、何故……何故乗れないの!?」

「……もしかしたらゴクウしか乗れないのかも」

「でも、そうならそうと書いてあるはず。レンマちゃん、ちょっと試して貰ってもいいかしら?」

「……えぇ」

「大丈夫よ。駄目だったら、沼に落ちる前に私が受け止めてあげるから」

「そういうコトなら……」

 少し嫌そうだったが、レンマはゴリラから觔斗雲に飛び乗る。飛び移ってきたレンマの体を、觔斗雲はやさしく受け止める。

「……おお、おお! 凄い! 凄いよお姉ちゃん! 乗り心地最高だよ!」

「レンマちゃんは乗れる……ということはプレイヤーも乗れるということよね? 何故私だけ乗れなかったのかしら?」

 訝しげな顔で考えるヨハン。

「……そういえば觔斗雲には、心が汚れていると乗れないって」
「!?」
「……なんかの漫画で読んだことがあった気がする」

「私の心が汚れている? あはは、ないない。ないわよ。それはありえないわ。ないないないない」

「……。……うん。そうだよね。ありえないよね」

 レンマは何か言いたそうだったが、幸い空気が読める少女なので、逡巡の末黙った。

「……それか、体重」

「体重……なら私は標準だと思うけど……体重……いや待って!」

 ヨハンは思い出す。

 ゴクウの身長が、丁度レンマと同じ、150cm台だったということを。

「身長……そうよ身長だわ!」

「……身長か。だとしたらお姉ちゃんは背が高いから、諦めるしか」

「いいえ。ゴクウの持っているもう一つのスキルで小型になれば行けるわ」

 そう言うと、ヨハンはもう一つのスキルを発動させる。

「――【地煞七十二変化】!」

 自分の体を大きくする……又は小さくするスキル【地煞七十二変化】が発動するとヨハンの姿が大きく変化する。
 170cmあった身長は140cm程まで縮み、それに伴って、外見も幼くなる。そして全身を覆う装備も変化。
 鎧は胸やひじなどの一部のみとなり、それ以外は漆黒のドレスのようなものへと変化する。カオスアポカリプスも空気を読んだのだろうか。その外見はまるでお姫様のようだった。

「成功ね!」

「……うわぁ、凄いよお姉ちゃん。もうどこからどう見ても小学生だよ! これはちょっとゼッカには見せられないお姿になってるよ!」

 レンマの言う通り、もしここにゼッカが居たのなら大変なことになっていただろう。それこそ、アカウントが抹消されるような事件になることは想像に難しくない。

「ただ体の大きさが縮むだけじゃなくて、年齢が若返るのね。面白いわ」

 声まで小学生時に戻ったヨハンは、はしゃいだ様子で飛び回る。そして、本来の目的を思い出すと、再び觔斗雲に飛び乗った。

 ヨハンの予想通り、やはり問題は体のサイズだったようだ。今回はすり抜けることなく、雲の上に体が収まる。

「いいわいいわ、ふわふわよ! それじゃあレンマちゃん。沼地の探索を再開しましょうか!」

「……うん、そうだね」

「それじゃあ觔斗雲、全速前進……え、え、ちょ、きゃああああああ」

 ヨハンのかけ声をうけて、急加速する觔斗雲。ヨハンを乗せたまま、目にも留まらぬスピードで、レンマを置き去りに、沼地フィールドの奥へと飛んでいく。

「……ちょ!? 待ってよお姉ちゃん!?」

 そんなレンマの声は一瞬で遠くなり。

「と……とま……止まって……止まれっ!!」

 必死に呼びかけるが、觔斗雲は止まることなく猛スピードで直進する。やがて、眼前に人影が見えた。

「危ない! ど、どいてー!?」
「はて……っぐんんんんんんんん!?」

 觔斗雲&ヨハンは通りすがりのプレイヤーを犠牲に、ようやく止まることができたのだった。

コミカライズ版連載中!!

 

no image
【旧】第124話 止まるんじゃねぇぞ

「危ない! ど、どいてー!?」「はて……っぐんんんんんんん!?」  止まることなく直進していた觔斗雲は、一人のプレイヤーにぶつかるとことで、ようやく止まる。  高所からの落下と同じくらいの衝撃とダメー ...

続きを見る

スポンサーリンク

記事スライドショー

2023/8/9

【予定】今後の投稿予定

いよいよ8月……も半ば、明後日からお盆という時期に相成った。 前回の記事…というかコミックス3巻の発売からすでに一か月経っていると考えると時間の経過が恐ろしい。 コミックスを購入してくれた方はありがとう! この記事ではこの一か月間の間に挑戦したことと、お盆以降の予定について報告したい。 7月~8月 挑戦したこと 新作を投稿する カクヨム - 「書ける、読める、伝えられる」新しいWeb小説サイト陰に生きる最強忍者さん、ダンジョンで美少女配信者を助けてバズってしまい無事忍...https://kakuyomu ...

ReadMore

2023/7/12

【7月14日発売】お前のような初心者がいるか! コミカライズ3巻告知用ページ【告知】

各種Webサイト様で連載中のお前のような初心者がいるか!のコミックス3巻が7月14日発売ということで、お知らせです。 通販サイトなどでは予約が始まっているので、まだという方は是非! お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです 3 posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 可愛らしく書いていただいたゼッカが目印! 内容としましては書籍版準拠で海賊王レイド後半~ドナルド登場あたりまでとなっております。 どこも面白く漫画としてまとめていただいてますので、是 ...

ReadMore

2023/4/16

【告知】引っ越しと新作がちょっといい感じの話

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、その後すぐに執筆を開始。 普段は6万字~10万字のストックを作ってから投稿を開始するんだけど今回は3話分、6000文字程度で投稿を開始。 超見切り発車で完成度は微妙。さらにはストックがないから殆ど投稿5分前に書き上がったのをそのまま出荷みたいな自転車操業をしている。 ただその分、今まで考えていた「読者受け」と ...

ReadMore

no image

2023/4/12

【旧】第139話 追加メンバーたち

 メンバー募集当日の昼。集合時間の一時間前。  竜の雛のミーティングルームには、見慣れない顔が揃っていた。  対外的にメンバー募集を発表した竜の雛。希望者には軽い面接の後にギルドに加入してもらう予定だが、現メンバーの顔見知りには、特に面接もなく加入してもらうことになっている。そんな友人経由の希望者には、一般の集合時間よりも早めに集まってもらっていた。 「ヨハンさん。私の友達二人をご紹介します!」  改まってゼッカがヨハンの前に連れてきたのは二人の女子高生プレイヤーだ。  一人はヨハンもよく知る人物、元【最 ...

ReadMore

2023/4/2

【無料】小説版 お前のような初心者がいるか! が無料で読めるお話

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知らなかった。 昨日寝る前に偶然発見したのでこちらでもご報告しておきたいと思う。 Kindle unlimitedを30日間無料で利用する   無料読み放題って作者は大丈夫なの? 「無料で読み放題とか大丈夫なのか?」と思われるだろうが心配ない。 というのも無料でもダウンロードされれば電子書籍が一冊買われたのと変わ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

おすすめ記事はコチラ

1

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知ら ...

2

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、 ...

-【旧】お前のような初心者がいるか!