お前のような初心者がいるか!

第113話 王座の間の攻防

「来た……」

 闇の城の最奥、王座の間の守護を担当する白いゴリラスーツの少女。レンマは扉を開けて入ってきた二人を見て、緊張感に体を震わせた。

 ヨハン覚醒まで残り17分ほど。他のメンバー達の頑張りが報われるか否か。みんなが繋いできたバトンが今、レンマに託された瞬間だった。

「おいおいおい、どういう冗談だこれは?」

 入ってくるなりレンマを一瞥したカイの声が、王座の間に響く。

「ようやくヨハンと戦えると思っていたのだがな。それが……」

 そして、レンマをにらみつける。

「こんな着ぐるみと戦えと?」

 トッププレイヤーの放つ威圧感に、元々対人が……人付き合いが得意ではないレンマは萎縮する。

「着ぐるみではありません……いや、着ぐるみを着てはいますが。彼女はレンマさん。ヨハンさんやゼッカさんの友人です」

「はっ。名前など覚える必要はない。さて、ヨハンはどこに隠れている? 貴様の悲鳴でも聞けば、姿を現すのかな?」

 嗜虐的な笑みを浮かべるカイに怯まされっぱなしのレンマ。だがその時。

「ギチギチィ」
「がるおおおん」

 カイとロランドに立ちはだかるように、二体の召喚獣が姿を現す。メカメカしいクワガタのモンスター【クワガイガー】。そして青い毛並みの【クリスタルレオ】。どちらもヨハンが持つ超級召喚獣である。

 その二体が現れたことで、レンマに立ち向かう気力が湧き上がる。自分でも、足止めくらいはできるだろうという、気力が。

(そうだ。お姉ちゃんが預けてくれたこの召喚獣たちが居れば。ボクでもやれる)

「ほう……懐かしいモンスターだ。なら、これくらいでいいかな」

 カイはメニューを操作すると、剣を構える。

「両方私が倒すぞ、ロランド」

「ご自由に」

「……な、なんだ。何をするつもりだ!?」

「ドラゴニックソウルカウンター10個使用。――ドラゴニックワイバーン!!」

 カイが剣を振り下ろすと、そこから10本の竜の頭部を持った白いオーラが放たれる。それらは5本ずつに分裂すると、それぞれクワガイガー、クリスタルレオを襲う。

「……攻撃!? それなら――ルミナスエターナル!!」

 すかさずレンマは、味方に10秒間の無敵を付与する守護者職最強防御スキルを発動。二体の召喚獣を守る体勢に入る。だが。

「無駄だ! ドラゴニックワイバーンは無敵状態を貫通し、さらにダメージ計算時、防御力も貫通する!」

「そんな!?」

 高いステータスを持っている二体でも、防御力貫通攻撃を5回も受ければひとたまりもない。カイの強力な攻撃の前に、クワガイガーとクリスタルレオはあっけなく消滅した。

「どうした? 最大の切り札を失った……という顔をしているぞ。――はっ」

 そして、スキル【スラッシュ】がレンマに打ち込まれる。レンマは後ろに吹き飛び、その様子を見てカイは笑おうとして……しかし、それを発見してしまう。

「これは……」
「繭?」

 王座に座るように置かれている大きな繭。今までレンマの影に隠れ、よく見えなかった、ヨハンの眠る繭が、二人に見つかってしまったのである。

「なんでしょうこの繭は……」

「そういえば、昨日滅ぼしたギルドの中に、このような繭を守っていた召喚師がいたな。泣きつかれたがそのまま殺したのだった……おいおい待てよ」

 何かを思い出したのか、カイはメニューを開く。

「そうか……それが貴様らの狙いか」
「どうしましたかカイ?」

「驚くなよロランド。あの繭の中身はヨハンだ」

「そんな馬鹿な……いや、本当だ」

 ロランドが繭を注視してみると、その上に確かに【ヨハン】と表示される。カイは昨日倒したモスらーから聞き出したスキル【繭化】の情報をロランドに伝えた。

「なるほど……しかしそれならば、今までの竜の雛の不自然な作戦も全て納得がいく」

「それで、どうする? 羽化まであと13分と言ったところ。待ってやるのも一興と思うが?」

「確かにどのような結果になるのか見たいという思いもありますが……ここで手を抜くのは竜の雛にも、我々を行かせるために外で戦ってくれている仲間たちにも、あまりに失礼というもの。ここは全力でいきましょう」

「はっ、それもそうだ。よしロランド。ここは俺に任せろ。これが最終決戦。我が奥義で全てを破壊してやる」

「ほう……随分と乗り気ですね」

「それはそうだろう。もう少しでも遅れていれば、あの繭から超強化されたヨハンが誕生し、我らが負けていたのかもしれないのだからな」

 言いながら、カイはレンマ、繭、そして王座の上に浮かぶギルドクリスタルを目視する。まるで、狙いを定めるように。

「長かったこの戦いも、今この瞬間で最後だ。行くぞ……全ドラゴニックソウルカウンター198個解放!!」

 カイの鎧から、竜の霊魂が次々とあふれだし、空中で収束していく。そして、それはやがて巨大な一匹の竜の姿となる。

 カイの持つユニーク装備【ドラゴンズガスト】の最強スキル【ドラゴニックコライダー】。外に居るプレイヤー達ですら全滅させるほどの攻撃が、目の前で完成されていく。

「そ、そんな……ここまで来て……負けるの?」

 ドラゴニックコライダーが完成されていくのを、レンマはただ黙って見ていることしかできない。

「そう嘆くことはないぞ着ぐるみの少女よ。たった8人でよくやったと褒めてやろう。だがこれで最後だ。行くぞ――ドラゴニックコライダー!!」

 白き竜たちの魂が、強大なエネルギーとなって、レンマと繭に襲い掛かる。レンマがもうダメかと思ったその時。

「もっ!!」

「え!?」

 レンマと繭、そしてギルドクリスタルを守るかのように。まるで壁になるかのように、次々と召喚獣が姿を現した。
 それは50匹以上のヒナドラとイヌコロ。バスタービートル。メテオバード。ソードエンジェル。ダークエルフ。プレレフア。メイドラグーン。リトルウィザード。バックアップチア。

 他にも様々な召喚獣が姿を現し、そしてドラゴニックコライダーに飲み込まれては消えていく。まさに捨て身だった。だがそれでも、徐々にドラゴニックコライダーの威力を消耗させ、そして。

「……みんな、お姉ちゃんを守るために?」

 レンマはイベント直前のことを思い出していた。

 今日はいつもの防衛とは違い、召喚獣は庭に200体配置するだけだ。なので、残り300の枠が余るのである。その枠に、ヨハンが自分の召喚石を詰めていたのを思い出した。

『レンマちゃんの助けになるといいなって思ってね』

(……そうか。この召喚獣は、ボクとお姉ちゃんを守るために……それなのにボクは……諦めたりして)

 そして、白き竜のオーラは完全に消滅。遂に、召喚獣たちはカイの最強の攻撃を、身を挺して防ぎきったのである。

「馬鹿な……こんなことが……」

 唖然とするカイ。召喚獣たちの捨て身に驚いたのか、それとも自分の最強の技が破られたことに驚いたのか。そんなカイを他所に、今度はロランドが前に出る。

「確かに驚きましたが……カイの攻撃も無駄ではなかった。この召喚獣ラッシュも、どうやらあの二体でお終いのようですよ」

 ロランドの見る方には、繭を守るように立つ二体の召喚獣。

 メタルブラックドラゴンとワーフェンリルの二体だった。

「はは、そうだな。あの二体、そして着ぐるみだけなら楽勝だな」
「ええ、早く片をつけましょう」

 二人は剣を構える。だが、その時。王座の間が大きな音を立てて開く。全員が振り返ると、そこに立っていたのは。

「お待たせレンマ! 助けに来たよ!」

「……ゼッカ!!」

 ギルティアを下し、王座の間に駆けつけたゼッカだった。そのゼッカの右手には深海剣アビス。そして左手にはギルティアから譲り受けた炎刀・烈火。

 それを見て、二人が仲直りできたのだろうことを察したロランドは、静かに微笑んだ。

 一方、カイは意地悪く笑う。

「あっははははは。貴様が来たということはだ、ロランド。お前の妹は負けてしまったらしいぞ? 傑作だ。あれだけのユニーク装備を持っていて無名の剣士一人倒せないとはなぁ」

 そんなカイの様子を見て、ゼッカは理解する。ギルティアはずっと、こんな嘲笑に耐えていたのだろうと。理解して、悔しくて……そして、思わず叫んだ。

「私の友達をいじめたのはお前だな? 私が必ずお前を倒す!!」

no image
第114話 今決別の、最果ての剣

「あのギルティア……そろそろトドメ刺していい? 私上に行かないといけないんだけど」  トドメを刺そうとした刹那、堰を切ったように今までのギルドに対する不満や愚痴を吐き出し始めるギルティア。  やれカイ ...

続きを見る

スポンサーリンク

記事スライドショー

2023/8/9

【予定】今後の投稿予定

いよいよ8月……も半ば、明後日からお盆という時期に相成った。 前回の記事…というかコミックス3巻の発売からすでに一か月経っていると考えると時間の経過が恐ろしい。 コミックスを購入してくれた方はありがとう! この記事ではこの一か月間の間に挑戦したことと、お盆以降の予定について報告したい。 7月~8月 挑戦したこと 新作を投稿する カクヨム - 「書ける、読める、伝えられる」新しいWeb小説サイト陰に生きる最強忍者さん、ダンジョンで美少女配信者を助けてバズってしまい無事忍...https://kakuyomu ...

ReadMore

2023/7/12

【7月14日発売】お前のような初心者がいるか! コミカライズ3巻告知用ページ【告知】

各種Webサイト様で連載中のお前のような初心者がいるか!のコミックス3巻が7月14日発売ということで、お知らせです。 通販サイトなどでは予約が始まっているので、まだという方は是非! お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです 3 posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 可愛らしく書いていただいたゼッカが目印! 内容としましては書籍版準拠で海賊王レイド後半~ドナルド登場あたりまでとなっております。 どこも面白く漫画としてまとめていただいてますので、是 ...

ReadMore

2023/4/16

【告知】引っ越しと新作がちょっといい感じの話

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、その後すぐに執筆を開始。 普段は6万字~10万字のストックを作ってから投稿を開始するんだけど今回は3話分、6000文字程度で投稿を開始。 超見切り発車で完成度は微妙。さらにはストックがないから殆ど投稿5分前に書き上がったのをそのまま出荷みたいな自転車操業をしている。 ただその分、今まで考えていた「読者受け」と ...

ReadMore

no image

2023/4/12

【旧】第139話 追加メンバーたち

 メンバー募集当日の昼。集合時間の一時間前。  竜の雛のミーティングルームには、見慣れない顔が揃っていた。  対外的にメンバー募集を発表した竜の雛。希望者には軽い面接の後にギルドに加入してもらう予定だが、現メンバーの顔見知りには、特に面接もなく加入してもらうことになっている。そんな友人経由の希望者には、一般の集合時間よりも早めに集まってもらっていた。 「ヨハンさん。私の友達二人をご紹介します!」  改まってゼッカがヨハンの前に連れてきたのは二人の女子高生プレイヤーだ。  一人はヨハンもよく知る人物、元【最 ...

ReadMore

2023/4/2

【無料】小説版 お前のような初心者がいるか! が無料で読めるお話

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知らなかった。 昨日寝る前に偶然発見したのでこちらでもご報告しておきたいと思う。 Kindle unlimitedを30日間無料で利用する   無料読み放題って作者は大丈夫なの? 「無料で読み放題とか大丈夫なのか?」と思われるだろうが心配ない。 というのも無料でもダウンロードされれば電子書籍が一冊買われたのと変わ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

おすすめ記事はコチラ

1

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知ら ...

2

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、 ...

-お前のような初心者がいるか!