お前のような初心者がいるか!

第110話 必ず勝つ

アタシ、ギルティアこと獅子王斬子は所謂、二世というやつだった。

おっさんおばさんなら間違いなく知っている世紀の大俳優と絶世の大女優が、ドラマのような恋愛の末に結ばれた愛の結晶。

それが私だ。

そんな生まれだから、物心つく前から子役としてデビュー。両親の才能を受け継いだ、最強の俳優になる……はずだった。

幸か不幸か。

私には所謂、演技の才能が……役者としての才能が皆無だったのだ。

5歳のとき。たしか、幼児向けのジュースのCM撮影のときだ。

 一口飲んで「おいしー」と可愛らしく、子供らしく笑う。それだけ。よくあるCM。それだけで終わる撮影を、しかし私は終えることができなかった。

当時の私は「おいしー」と言うのを拒んだのだ。

理由は簡単だ。

そのジュースがとんでもなく不味かったからだ。

わかってる。お金を貰う以上、例え不味くても美味しいと言わなくてはいけないことはわかっている。それはわかるの。

でも当時の私にはそれができなかったのだ。TVの向こうの人たちに嘘は言えない……そんな正義感を持っていたのだ。

そんな事件があって、世間では色々叩かれたらしいけど。演技の才能はないと判断された私は、両親に普通に育てられた。

ぶっちゃけラッキーだった。

そのお陰で絶佳や美優とも出会うことができたのだから、後悔はしていないし、そもそも役者という人生にそれほど魅力を感じていないから。

兄を見ていると、余計にそう思う。

物語を、人生を、人格を。何もかもを演じてしまう、演じ切ってしまう兄を見ていると、余計にそう思ってしまう。

私は嘘をつくのが嫌いだった。嘘をつかれるのは別にいい。寧ろ、私の好きなアニメや漫画だって突き詰めれば嘘だ。

だけど私自身は嘘はつけない。つきたくない。思ったことは正直に言う。

だから友達はなかなかできなかったけど、そんな私でも仲良くしてくれた絶佳と美優は本当にいいヤツだと思う。

でも……。

何故なんだろう。

私は嘘はつけない……はずなのに。絶佳や美優を前にすると、本当の気持ちが出せなくなる。
思ってもないことを言ってしまう。

本当に伝えたいことは……違うのに。本当は……。

***

***

***

「アタシと一騎打ち……ねぇ。あの女狐ならともかく、ゼッカ。アンタには負ける気がしないわ」

ギルティアの言葉に、ゼッカは怒らない。静かに、答える。

「この一騎打ちのために、みんなが頑張ってくれた。この時、この瞬間のためにだけに、みんなが協力してくれた」

そして、自身が持つ最強の双剣【デッド・オア・アライブ】を構える。

「必ず勝つ」

「必ず勝つ……か。ねぇゼッカ。賭けをしない?」

「賭け?」

「そう。この勝負。もしアタシが勝ったら、竜の雛を抜けて戻ってきてよ」

「やだ」

「アタシが負けたら、アタシがアンタのギルドに……え、嫌なの?」

ゼッカはコクリと頷いた。

「な、なんでよ! そういう雰囲気だったでしょ!?」

「言ってる意味がわからないよギルティア。私が貴方に勝ちたいのは、貴方が私が愛する二刀流とこの剣を馬鹿にしたから。私が愛する【竜の雛】を馬鹿にしたから。だから……叩き潰す。それに……」

ゼッカは構えると、挑発的に笑う。

「うちのギルドに貴方(ギルティア)はいらない」

「コロス……」

イラっとしたが、しかしギルティアは冷静だ。スキル【換装】によって、素早く剣を手に装備する。

取り出したのは扇形の剣【芭蕉剣・羅刹女】。攻撃能力は一切持たないが、一振りで大きな突風を発生させ、相手を強制的に転倒させることができるユニーク装備。

(これでまずアンタの戦意を削ぐ)

ギルティアが芭蕉剣を振る。強大な風が発生し、ゼッカを襲う。だが。

「なっ……!?」

こちらに突っ込んでくるゼッカは転んだように見えた。だがすぐに起き上がり、またギルティア目掛けて走ってくる。恐ろしいことに、その速度は全く衰えていなかった。

「どういうこと……!?」

何らかのスキルだろうか。焦ったギルティアは芭蕉剣を何度も振る。だが何度やっても、ゼッカの接近を妨げることができなかった。

(そうか……あれはサッカーのスライディングだ。風にぶつかる寸前にスライディングで地面に肘と背中の一部を接地させてる。あの状態だとシステムが既に転んでいると判断するってこと!? くっ……)

実際にやれば体が傷だらけになる行為。VRならではの攻略法と言えるだろう。

(芭蕉剣は兄貴ですら突破できないのに。こんな方法を思いつくなんて……ゼッカ)

自分の知らないゼッカに苛立つギルティア。換装により、今度は【崩雷剣・クワガイガー】を装備。

内蔵されたスキル【ライトニングボルト】が発動すると、剣からいくつもの稲妻が飛び出し、ゼッカを襲う。

「チッ……」

ゼッカは舌打ちしつつも回避。それによりゼッカを遠ざけることに成功したと思ったギルティアだったが、そこで違和感に気づく。

(距離が……近づいている?)

ゼッカから距離を取りたくて放った【ライトニングボルト】だったが、ゼッカは回避をしつつも、確実にギルティアとの距離を詰めてきている。

(上手くなってる……あの頃よりも確実に……そして)

ギルティアは【換装】を発動。【冥王の剣】を右手に装備する。

(もしかして……まだアタシが近接戦苦手だと思ってる?)

遂にギルティアに接近したゼッカが左手を伸ばす。白い剣の切っ先がギルティアの鎧を掠めた。

 ギルティアの黄金の鎧【グランドアーマー】は重量級の装備である。GOOでは鎧に重さの概念はないが、防御力の高い鎧は可動域が少なくなる。そのため、ゼッカやロランドのような高速戦闘を得意とするプレイヤーを相手にするのは苦手なのだが。

「二撃目っ!!」

 ゼッカの白い剣がギルティアを切り裂く。ダメージは入らない。ギルティアのグランドアーマーにはダメージを減少する能力があるため、強力な攻撃をしなければHPを削り切れない。
 だが、ゼッカは今の二撃で3つのガッツを回収した。前回の戦闘からして、あと一つ、合計4つのガッツを消費して黒い剣をたたき込めば、ギルティアのHPをゼロにできる。

「けど、させない――ハデスフォース!!」

「なっ!?」

 ギルティアが叫ぶと、冥王の剣から闇の波動が広がり、ゼッカの体が浮いた。そのまま吹き飛ばされたゼッカは空中で体勢を立て直すと、地面に着地する。

「休ませないわよゼッカ!」

だがゼッカが状況を判断する前に、ギルティアが追撃する。新たな両手剣に換装すると、それをゼッカ目掛けて振り下ろす。回避は間に合わないと判断したゼッカは双剣をバツ字にクロスさせ攻撃を受ける。

「くっ……重いっ」

「はっ! この剣を受け止めてしまったわね!」

「何を言って……ああ!?」

見ると、ゼッカの破壊不能の筈のデッド・オア・アライブに亀裂が走り、光の粒子となって消える。GOOにおける武器破壊の演出だった。

「……」

訝しげにギルティアを見やる。するとギルティアは勝ち誇ったように笑い、同じく崩壊していく両手剣を指さした。

「あはは。残念だったわねぇ! これはユニーク装備を破壊するユニーク装備【破壊剣・ソードブレイカー】よ。どうゼッカ? 切り札を失った感想は」

「……」

だがゼッカは怒らない。黙々とメニューを操作すると、新たな剣を取り出した。

それは青い刀身の剣だった。

「それは……【深海剣アビス】……」

「そうだよ。これはミュウが辞める時、私に預けてくれた剣」

そしてゼッカはもう一人の親友の剣を構える。

「ギルティア。私はあなたと離れてから得た、全てを使って、必ず勝つ」

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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