お前のような初心者がいるか!

第104話 お前を倒すのはこの俺だ

最果ての剣の圧勝に思われた門前での戦いは、意外にも混迷を極めていた。

「死にそうな者は庭の中に入れ! そして護衛召喚獣に殺されろ。間違っても最果ての連中に殺されて奴らのポイントになるのではないぞ? 死ぬならその身は魔王に捧げよ!」

「「「「「うおおおおぉぉおおおお!!」」」」

「いや普通に回復しようよっ!?」

掲示板の民唯一の常識人エックスの突っ込みもむなしく、正論は喧騒に飲まれ消えていく。

「ってか、今更なんですけど……」

戦闘しながらも、エックスはリーダー格の男、アベンジャーマスオに尋ねる。

「ヨハンを倒したいなら、今からでも最果ての連中と手を組んだ方が良くないですか?」

「ごもっともな意見だな。だがなエックス。奴らの顔を見てみろ」

「顔?」

言われてエックスは、最果ての連中の顔を見回す。

「見ても何もわかりませんが」

「愚かな……」

「愚かっ!?」

「奴らの顔を見てみろ。イケメン揃いだ。つまり敵だ」

「敵!?」

「お前は我々にイケメン共と手を組めというのか?」

「いや関係ないと思いますけどぉ!?」

「馬鹿言うなー」
「イケメンのくせにゲームなんてやるなー!」
「コロス……コロス……」

「わぁい今日も滅茶苦茶だぁチクショー!!」

イカれたメンバーたちのお陰でようやく吹っ切れたエックス。

「くっ……なんだこいつら……」
「このテンションの高さ……クスリでもやってんのかって……VRだからねーか」
「寧ろやってて欲しいわ。素面でこのテンションとか普通にヤベー奴らだよ!」

掲示板の民の鬼気迫る迫力に、いつもの力を発揮できない最果ての剣のメンバー。驚くべきことに、戦況は互角だった。

もちろん、掲示板の民の人数が最果ての剣より倍近く多いというのもある。しかし、それだけではない。

ヨハン対策にと様々な寄り道、無駄な対策を研究し続けてきた結果、今の掲示板の民の実力は、2VS1ならランキングプレイヤーたちとも互角に渡り合えるまでに成長していたのである。

もう、あの頃の奇襲を仕掛け、あげく返り討ちにされていた卑怯者たちの姿は、そこには無かった。

「ふぅん、我らはあの竜の雛と互角の戦いを繰り広げてきた者たち」
「例えトップギルドであろうと」
「恐るるに足らず!」

門前に、掲示板の民の勝ち誇った声が響き渡る。

そして、その戦いをロランドたちは離れた場所から眺めていた。上位メンバーたちは、戦力温存の為、この戦いには参加していなかったのだ。

だがギルドメンバーたちがあまりにも苦戦しているため、徐々に彼らにも苛立ちが募っていく。

「まさかこのような雑魚共相手に、我らの手助けが必要なのか? ははは、これは参ったぞ。私が不在の間に、最強ギルドの質も随分と下がったものだな妹」

カイの責めるような言葉に、ギルティアは顔を暗くする。

「どうした、何も言い返して来ないのか? 妹、やはり貴様はギルドマスターの器ではないのだ。優秀な兄にそのポジションを譲ったらどうだ?」

「う……でも、最果ての剣はアタシの……アタシたちの……うぅ」

「おいおい泣くつもりか? それはやめてくれよ。これでは私がお前をイジめているようではないか。これは私の意見ではなく、ギルドの大半のメンバーの本音だぞ。つまり、事実を言っているだけだ。まぁ、このギルドでは、誰もお前をギルドマスターと認めていないということだ」

「くっ……そんなこと」

「そこまでだ」

言い返せずに、悔しそうに俯く妹をかばうように口を開いたのはロランドだった。

「この状況を妹のせいにするのは間違っていますよカイ。質が落ちたのではなく、単純にあの方々が強いのだ。まぁ、どういった方々なのかは全くの謎ですが。あのヨハンさんと互角の戦いを繰り広げてきたというのも、おそらく本当なのでしょう」

竜の雛と掲示板の民たちとの関係性は、ロランドを持ってしても理解不能だった。いや、本人たちでさえも説明できなそうなので、無理もないと言ったところか。

「仕方がありません。温存などと言っている場合ではないと見ました。加勢しましょう」

剣を引き抜くロランド。だがその時、背中に殺気を感じて上半身をのけぞらせると、さっきまでロランドの頭があった部分を、物凄いスピードで何かが通り抜けていった。

「ちょちょちょ……何? 弾丸!?」

「いえ。あれは……ビー玉」

最果ての6人が振り返ると、そこには10人ほどの集団が居た。彼らはそれぞれが手に、なにやら玩具のようなモノを持っている。

「いきなり攻撃とは……一体なんなのですか貴方たちは?」

ロランドの質問に、待ってましたとばかりに男たちは答える。

「よくぞ聞いてくれた」
「そう!」
「我ら殺殺(ころころ)ホビー部!」
「ゆとり世代懐かしのコラボイベントアイテムの使い手である」

なんと、初日にゼッカと激闘を繰り広げた殺殺ホビー部の面々が現れたのだ。

「はっ……何かと思えばネタ勢か。消えろ。時間の無駄だ」
「いやー流石にその歳で玩具はキツいっすおじさん方……」
「はっはっは。大人になりましょうぞ」

そんな殺殺ホビー部のノリを、一笑するカイ、クリスター、ガルドモール。

一方。

「懐かしい。リガちゃん人形はありますか」
「よく兄妹で遊んでたねー」

とちょっとテンションが上がるロランド&ギルティアの兄妹。その反応に目を光らせるホビー部。

「それがあるのだよ。我らのギルドホームになら」
「どうだいお二人。これから我らのギルドホームである【トイ晒(さら)す】で遊ばないか?」
「戦いは何も生まないぜ」

「かなり迷いますが……お断りさせて頂く。何せ、真剣勝負の真っ最中なのでね」

「それは残念」
「ならば……」
「こちらも本気を出さねば無作法というもの」

勧誘が無理とわかった途端、ホビー部の面々は各々の思い入れのある玩具を取り出す。

ビーダマシン、ギア四駆、ベイソード。

かつてゼッカが戦った三つの玩具に加え、【ウルトラヨーヨー】や【バトル色えんぴつ】など、別の玩具の使い手も混ざっている。

そして。

「ゴーシューッ!!」
「レッツゴー!!」
「ファイト!!」

最果ての6人に対し、問答無用で攻撃を開始した。

***

***

***

「ありがとうございました。いいバトルでした」
「楽しい勝負だったぜ……ガッチャ!」
「次はホビーで戦おう」

無駄に爽やかな台詞を残し、殺殺ホビー部の連中は光の粒子となって散っていった。

いくら自慢の玩具とはいえ、性能自体はネタ級。トップ勢には及ばなかった。

「ふん。この調子で門前の雑魚共も蹴散らしてやる」
「いや、待ってください」

ロランドに言われ、カイが周囲を見回すと、他所の強豪ギルドの部隊がチラホラと見える。全員がヨハンの城を攻め落とそうと、機会を窺っているのだ。

そして、打倒ヨハンの集いとも最果てとも手を組むつもりはないらしい。

「もしかしてアタシたちの同士討ちを期待してるのかしら?」
「いえ。我々が竜の雛を落とすのは、向こうとしても嬉しい状況のはず」
「だとすれば、ヤツらとの戦闘で弱った我らを倒し、ポイントを稼ぐつもりか」

「まぁ、どちらに転んでもいいように、様子を窺っているのでしょう」

「冗談では無いぞ! 只でさえ無駄な時間を浪費したというのに、これ以上付き合っていられるか」

「私も同意見ですね」

イライラの限界といった様子のカイに、ロランドも同意した。

「どうでしょうギルマス。ここは他の皆に任せ、我ら6人だけで先に城の中に潜入するのは?」

「それ良い考えだわ兄貴。向こうは8人。6人でも問題ないでしょ!」

「そうと決まれば、駆け抜けるぞ!」

ロランド、ギルティア、カイ、クリスター、ガルドモール、グレイスの6人は戦う味方と掲示板の民の間をすり抜け、門へと向かうのだった。

ヨハンの覚醒まで、あと4時間。

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第105話 分断

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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