お前のような初心者がいるか!

第79話 日本に核兵器が必要ない理由

ゼッカ Lv:50 剣士

VS

双雲そううん Lv:38 弓使い

 ビー玉を発射する二頭身ほどの人形玩具、通称ビーダマシン。コラボイベント限定アイテムであるビーダマシンは一応【弓】扱いとなっており、職業【弓使い】である双雲が戦いを挑んできた。

対するゼッカは無属性片手剣【プロトカリバー】を二本、両手に装備している。

「うちのギルドマスターをナンパした大罪許すまじ。貴方たちの腹部に風穴開けてビー玉詰めて人間ビーダマシンにしてやりますよ!」

「フッ、できるかな?」

 忍者衣装に赤マフラーの双雲が前に出る。双雲は両手を突き出す形でビーダマシンを構える。そして、ギギギと音が鳴るほどに力を込めて、ビー玉のホールドパーツを締め付ける。そして、込めた力を解き放つように、玉を発射した。

 弾丸がごとく発射されたビー玉はゼッカの元へ真っ直ぐ飛んでいく。だが、ゼッカの反射神経は並ではない。

構えを解かぬまま、必要最低限の動きで回避する。昔からドッジボールでは最後まで生き残る子だった。

「甘いですね。そんな弾速で私に当てようなん……ぐっ」

だが、回避した筈のビー玉はゼッカの腹部に直撃。赤いダメージエフェクトが鮮血のように飛び散った。

「フッ。我が職業は【弓使い】……お忘れかな?」
「くっ……そうでした。玩具に気を取られて忘れていた……【必中】」
「そう。弓使いの基本にして、必須スキル。それを失念しているとは……口ほどにもない」

双雲は笑う。

スキル【必中】。弓使いが使える基本スキル。その効果は弓武器による攻撃を必ずヒットさせるという強力なもの。但し、条件として、ターゲットを必ず目視している必要がある。

無論、必中への警戒は対弓使い戦の基本であり、ゼッカもそれは心得ている。だが目の前の敵が持つ得物があまりにも弓からかけ離れていたが故、それを失念していたのだ。

「ふははははは! これでトドメ! 覚悟!!」

 双雲はゼッカを大した相手ではないと見切り、次のビー玉を詰める。そして次の攻撃に様々なスキル効果をエンチャント。そして必中を付与すると、再び玉を発射した。次の発動までのスパンが短いのも、必中の厄介なところである。

「ゼッカちゃん!」

ヨハンが叫ぶ。だが。

「舐めるな――ファイナルセイバーああああああ!!」」

ゼッカは右手のプロトカリバーを投げ捨てると、残ったもう一本を両手で握る。そして剣士系最強スキルを発動させる。

振り抜いた剣から黄金の輝き。それはエネルギー波となって敵に向かい、ビー玉とぶつかり合う。

「なっ!? 俺が先に撃ったのに……合わせただと!?」

ゼッカのスキル発動までの早さ、そして対応の早さに驚愕する双雲。

 必中への対抗策は放たれた矢、弾丸、弾と同等以上の攻撃による相殺である。ゼッカは最強の攻撃スキルでもって、敵の放ったビー玉を消し飛ばす。さらに、ファイナルセイバーのエネルギーは消えること無く、直線上に居た双雲を襲う。

「ぐっ……見事だあああああ」

そして双雲のHPはゼロになった。ゼッカは投げ捨てたプロトカリバーを拾い上げる。その表情はどこか疲れていた。

弓使いは様々な効果を持つ矢(弾やビー玉も矢というくくり)を生成する事ができる。長期戦になればそれだけ不利だと思ったゼッカは短期戦に持ち込んだのだ。

「さぁ、次の人は誰ですか?」

ゼッカが殺殺ホビー部の面々に勇ましく剣を向ける。挑発ともとれるその行為に別段苛立つでもなく、次の対戦相手が前に出た。

「次は我が相手だ」カチャ

大人の男たちが集うホビー部の中でも一際大柄な男【バイソン】が前に出た。手にはスポーツカーのような玩具が握られている。

「あ……あれはまさか……ギア四駆!?」
「知っているんですかヨハンさん?」
「ええ。電池とモーターで動く自動車模型よ。レースさせて遊ぶの」

まだ小学校にも上がっていない頃、同じマンションのお兄ちゃんたちが遊んでいるのを眺めていた事を思い出すヨハン。

「なるほど。ようやく真っ当な玩具が出てきましたね。どのように戦うのか楽しみです」

ゼッカが嬉々として剣を構えると、バイソンは不敵に笑って、片膝をついた。

「フッ。では早速第二ラウンドといこうか」

バイソンがギア四駆のスイッチをカチッと入れると、キシィ~ンというモーター音が響き渡る。

「では行くぞ! レディーゴー!!」

ゼッカ Lv:50 剣士

VS

バイソン Lv:44 破壊者

バイソンがマシンから手を離すと、ギア四駆は猛スピードで走り出す。

「行っけー!! 我のサイクロンハリケーンスティンガー!!」
「長っ」

バイソンはどうやらマシンに自分だけの名前を付けるタイプの人間だったらしい。

そして、身構えるゼッカの周囲をギア四駆とバイソンが囲む様にグルグルと回る。そのスピードは確かに凄い。

だが。

「何でアナタも一緒に走ってるんですか!?」
「ははは、気にするな」
「いやめっちゃ気になる!」

そんなゼッカを他所に、いつまでもいつまでも、バイソンとサイクロンハリケーンスティンガーはゼッカの周りを走り続けた。

「うふふ、楽しそうね」
「いや、私たちこんなことしてる場合と違うんですよ。なんで玩具と走ってるおっさんを見続けなくてはならないんですか」

愛機と共に走るバイソンを微笑ましく見守るヨハン。

だがゼッカはしびれを切らしたようだ。
足下に転がっている石ころをコツンと蹴飛ばし、ギア四駆の動線の先に飛ばす。そしてその小石にぶつかったギア四駆はクラッシュし、遙か遠くへと吹っ飛んだ。

「ああっー!? 我のサイクロンハリケーントライスティンガーがああああああ」

 吹っ飛んだギア四駆は地面に激突すると、ひっくり返ってしまう。空を切りながら回り続けるタイヤとモーター音がなんとも切ない気持ちにさせる。

 バイソンは慌てて愛機に駆け寄ると、拾い上げて各部の状態をチェック。異常が無いことを確認すると、愛機に数回キスをして、再び走らせ始める。

「おのれゼッカ殿……我の愛機【サイクロンハリケーントライスピンスティンガー】になんてことを……」
「ふふ。生憎私はレースをしに来たわけじゃないんですよ。心躍るバトルを求めているんです」
「フッ。バトルか。ならば見せてやろう」

 ゼッカの言葉に不敵に笑ったバイソンは、自らの手にスッと指輪を嵌めた。そしてグー手のまま指輪をゼッカの方へ向けると、赤く細長い赤外線の光が伸び、ゼッカの胸に当たる。

「攻撃……ではないようですね。一体何を?」
「マズいわゼッカちゃん。避けて!!」

「え? うわあああああ!?」

 地面を走行していたギア四駆の車体の前部にドリルが現れたかと思うと、飛び上がってゼッカの方目掛け、回転しながら飛び込んできた。

それを間一髪回避するゼッカ。

「な……なんですかアレ!? やっぱヨハンさんたちの子供時代の玩具おかしい……」
「ち、違うわ! ギア四駆は確かに安全な玩具だったはずよ」

「ふっふっふ。その様子。どうやらヨハン殿はアニメ版は未履修のようですな」

「ええ……まぁ」

「確かに市販されてたギア四駆は真っ当な玩具。しかしアニメでは敵のギア四駆を破壊することで勝利を手に入れる敵マシンが多く存在したのだ。その殆どは現実では再現不能。しかしここGOOなら……子供の頃憧れたバトルマシンと共に戦えるのだ」

「いや、普通にレースしましょうよ……」
「ごもっともぉ!!」

バイソンがそう叫ぶと、ゼッカに照準されたポイントレーダーに向かって敵のギア四駆が飛び込んできた。

「行けええサイクロンハリケーントライスピンスティンガーエボリューション!! 敵を貫けええええ!」
「ふん! 向かってくるところがわかっているなら……はあああああ」

ゼッカは剣を交差させると、サイクロンハリケーントライスピンスティンガーエボリューションの攻撃を受け止める。

「軽い!」

そして、剣を振り抜くと、その衝撃で敵機は吹っ飛ばされた。

「ああ、我のサイクロンハリケーントライスピンスティンガーエボリューションGが!?」
「さっきから徐々に名前が伸びてるような……トドメ!!」

愛機に目が行っていたバイソンの近くへ飛び込むと、二刀流スキル【ダブルスラッシュ】を打ち込み、バイソンのHPを0にする。

「わ……我の負けか……だが……女子と遊べて……悔いなし」

どこか爽やかに膝を折ると、バイソンは光となって消滅していった。

「さあ。これで私の二勝です。最後は誰ですか?」
「オレだ……」

そして、殺殺ホビー部最後の相手が現れる。黒髪にノースリーブ、白いマフラーを巻いたその男【シエル】はコマのような玩具を取り出した。

「ヨハンさん……あれは?」
「ベイソード、ベーゴマを進化させた玩具ね。私は持ってなかったけど、大ブームになって、各地で品切れや抱き合わせ販売が起きたと言われているわ」
「怪物ウォッチみたいな感じですか。社会現象起こしてるんですね……」
「ええ。しかも、進化を続けて、まだシリーズが続いてるはずよ」
「あ、そういえば親戚の子供が遊んでるの見たことあるような気がします……」

「ふん。ゼッカと言ったか。オレの名前はシエル。悪いがオレは前の二人とは違い……GOOもガチでやっている。甘く見ない方がいいぜ」
「相手にとって不足無しですか……いいでしょう!」

両者、共に武器を構える。シエルはベイソードを銃型の発射装置にセット。

「シエルくーん! 君が最後の砦だー」
「頑張ってくれー」
「ヨハン殿を引き入れるんだー」

シエルの背に、残ったメンバーたちからの声援が送られる。だが、それを受けたシエルの反応は、意外にも淡泊だった。

「はぁ……実を言うと、オレはヨハンを誘うのは反対なんだ」
「ほぉ……何故です? あんなに格好良い可愛い美しいヨハンさんが要らないと?」
「……」

ゼッカの圧に一瞬怯みながらも、シエルは理由を口にした。

「いや、ヤツはさ。堂々としてるだろ。いい歳して堂々とバチモンを好きだと言い、愛し、愛されている」
「それに何か問題が?」
「大ありさ。俺たちは異常者なんだよ。いつまで経っても子供の頃の思い出から脱却できない異常者だ。本来卒業するべき事を卒業できず、いつまでもいつまでも……恥ずかしくもしがみつく。辞めよう辞めようと思っていても、新しいベイが発売されれば買ってしまう。もう、遊ぶ相手も居ないのに……だ。これを異常者と言わずしてなんと言う?」

「貴方は……恥ずかしいんですか?」

「そうだとも。だからこんな世界に来て仲間を探した。正直殺殺ホビー部は居心地がいいよ。オレみたいに、現実じゃ堂々とホビー趣味を楽しめない連中のオアシスだ。だがヤツは違う。ヨハンは違うだろ。あんなに後ろめたさも何もなく、自分のガキ趣味を堂々と楽しむのは、違うだろ」

ゼッカはとても悲しい目でその話を聞いていた。後ろに居るヨハンがどんな表情をしているのかはわからない。

だが。

「貴方たちには少々がっかりしました。一瞬で終わらせましょう」

冷たい声で剣を構える。そして、ホビー部との最後の戦いが始まった。

ゼッカ Lv:50 剣士

VS

シエル Lv:50 剣士

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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