お前のような初心者がいるか!

第64話 永久機関が完成しちまったな

 アイスデーモンの出現ポイントを目指しフリーズアイランドを進むヨハンたちは、何度目かの戦闘をしていた。

「今回は俺たちに任せてくれよ。ギルマスは後ろで見ててくれ」
「え……どうして?」
「だってヨハンさん、全部先に倒しちゃうじゃないですかー。それじゃ私たちの練習にならないですよ」

と啖呵を切ったオウガとメイは、カエル型のモンスター、アイストードと戦っている。集団で襲ってくるモンスターだが、そこまで強いモンスターではない。

 だが、そんなアイストードに、オウガとメイの二人は苦戦していた。移動する際に大きく飛び跳ねたアイストードが着地した地面の氷は浅いクレーター状になってしまう。水が溢れてくることは無いのだが、10体近くのカエルたちが飛び跳ねまくったせいで、フィールドはボコボコの段差があちこちに発生しており、オウガの機動力を奪っていた。

「くっ……うわあああ」

 攻撃を加えようとしたオウガは地面のヒビに足を取られ、その場につまずく。その背中に、アイストードの舌がムチの様に打ち付けられた。

「オウガ!? えっと、【ブラックファング】の召喚を解除。【ヒールドルフィン】を召喚。【メガヒール】」

 メイは前線で戦っていたブラックファングを退却させると、回復魔法を扱える初級召喚獣ヒールドルフィンを召喚し、オウガのHPを回復させる。

「回復サンキュー!」
「きゃっ……私の方にもカエルが……オウガ、早く助けて」
「おう、今行くぜ……うわ、また滑った」

「足場の悪さに苦戦しているみたいね……でもモンスターと召喚獣は平気そうよね……そうだわ!」

 いいようにカエルたちに翻弄されている二人を遠くから見ているヨハンは、ふと思いついたように、ストレージから召喚石を取り出した。

「召喚獣召喚――ブラックファング」

幾何学的な魔法陣から、黒い大型のオオカミが出現した。スキルを持たないコモン召喚獣ブラックファングである。

「ガルルン」
「ブラックファング、今からあなたをオウガくんの隣に投げるから、上手く着地するのよ?」
「ガルッ!?」

 ヨハンはブラックファングの頭を両手で掴んで投げる。弧を描くような軌道で宙を舞ったブラックファングはヨハンの狙い通り、オウガのすぐ横に着地した。

「ぎ、ギルマス……手助けは無用と言ったはずだぜ」
「ええ、あくまで戦うのはあなたよ。でも、考えがあるの。そのブラックファングに乗って頂戴」
「乗れって……いいけどさ」

疑問符を浮かべながらブラックファングに跨がるオウガ。それを確認すると、ヨハンは叫ぶ。

「それじゃあブラックファング! カエルの攻撃を回避しつつ、その周りを走るのよ!」
「ガルルン!」

 ブラックファングは吠えると、ヨハンの指示通り、オウガを乗せたまま走り出す。その機動力は足場の悪さに影響されている様子はなかった。ヨハンの読み通り、モンスターと召喚獣は多少足場が悪くても従来通りに動けるようだ。

「なるほど……流石ギルマスだぜ……こういうことだろ――スラッシュ!」

 オウガは振り落とされないように注意しながら剣を引き抜くと、通りすがりに攻撃スキルを発動。アイストードの横っ腹を切り裂いた。

「ゲェエエエエエエ」

その一撃でアイストードを一匹仕留める。

「なんか破壊力が増しているような……ん?」

その時、オウガに新スキル習得のメッセージが表示される。

【モンスターライダー】
味方召喚獣に乗ることで、召喚者からコントロールを得る。
召喚獣の敏捷ステータスに自分の敏捷ステータスを+。
自分の筋力ステータスに召喚獣の筋力ステータスを+。

《入手条件》
剣士・槍使い・弓使いが召喚獣に乗った状態で敵を倒す。

「ブラックファングの筋力値が俺の筋力値に加算されてたのか。通りで手応えがあったワケだ……ん、まさかギルマス……ここまで計算して……?」

オウガは遠くで腕を組んでこちらを見ているヨハンを見やる。かくいうヨハンは……。

(少年とモンスターの組み合わせ……やっぱりイイわね!)

全く違うことを考えていた。

「なるほど計画通りってワケか。流石だ。よぉし、このまま行くぜブラックファング」
「ガルルン!!」

勢いに乗ったオウガは残りのアイストードを瞬く間に片付けるのだった。

***

***

***

 氷の壁に囲まれた道を進んでいくと、一際開けた場所に出た。開放感のあるその土地こそが、ドナルドが言っていたアイスデーモンの現れるエリアである。異様に手が長い、白い悪魔型のモンスターアイスデーモンを早々に撃破した三人は、気を緩めることなく次を待っていた。

 すると、広場の中央に光の粒子が集結したかと思うと、再びアイスデーモン7体が現れた。その身長は3メートルと高く迫力がある。

「リポップというのかしら……本当にすぐに出現するのね」
「普通はもうちょっとかかるんですけどね」
「今の俺たちにとっちゃ、ありがたい」

復活したアイスデーモンはヨハンたちを見つけると、口元をニヤリと歪め、襲いかかってくる。

「メイ、頼むぜ」
「わかったわ。召喚獣召喚――ブラックファング!」
「ガルルン!」
「よっしゃ、行くぜ相棒」
「ガルルン!!」

オウガはメイが召喚したブラックファングに跨がると、剣を構えて敵陣に突っ込んでいく。

「頑張ってねー……? あれオウガが召喚獣に乗ってると、私やることないですね……」
「一応サポートはできるみたいだから……頑張って」

 メイを励ますと、ヨハンも戦いに参加する。まずバスタービートルのスキル【バグ】をバラ撒いて敵をかく乱。そしてブラックフレイムで一体一体確実に仕留めていく。

「ふぅ……ちょっと疲れたな」

そして7体全てのアイスデーモンを倒し終わった後。

 MP切れで消滅したブラックファングを見送ったオウガはヨハンたちの方へ戻ってくる。アイスデーモンたちとの戦いは二度目だが、道中の戦いも含めれば結構な数になる。オウガとメイは明らかに疲れた様子を見せていた。

「アイスデーモンを倒すのは苦労ないんだが……精神的にキツいな」
「5分のインターバルがあるから余計にね」
「でもレベルは確実に上がってるのよ? これを繰り返すしかないわよ」

 今日だけでヨハンとオウガが1つ、メイが2つレベルを上げている。だが3人が目指すのはレベル40。先は長いと言ったところか。

「何か効率的な狩り方を考えたほうがいいな」
「私そういうの苦手……何かいいアイディアはないでしょうかヨハンさん」
「そうねぇ……」

 ヨハンとしては、小学生組とゲームを遊んでいるだけで楽しいので、別にアイスデーモンを倒す効率などは、どうでもよかった。寧ろ、ヨハンはゲームのプレイに効率性を持ち込みたいとは思っていない。

(そういうのは、仕事で散々やってるのよねぇ。やれコストカットだアウトソーシングだと……でも)

ヨハンは小学生二人を見やる。どうすれば効率よく敵を倒せるか考えているその真剣な姿に、なんとかしてあげたいという気持ちが沸いてくる。

「そうねぇ。それじゃあちょっと試してみようかしら。見ていて」

そう言うと、ヨハンはストレージからメテオバードの召喚石を取り出す。

「召喚獣召喚――メテオバード」

 幾何学的な魔法陣から現れた隕石の外殻を纏った赤い鳥に跨がると、ヨハンは遙か上空へと飛び立つ。そして、自らに筋力アップのバフを掛けまくり、飛び降りる。

「――ファイナル・メテオ・インパクト」

 落下中、地面に向かって足を突き出し蹴りのポーズを作る。炎を纏って敵に突撃するメテオバードのスキル【ファイナル・メテオ・インパクト】を発動させたのだ。ヨハンの体はみるみる内に炎に包まれ、まるで隕石のように氷の大地に激突する。

 フリーズアイランド全体が揺れたのではと錯覚する程の衝撃。オウガとメイが目を開くと、そこには深さ10メートル以上はあるだろう巨大なクレーターがあった。

「マジかよ……」
「ヨハンさん!?」

 上空に居たメテオバードがすぐさまヨハンの元に駆けつけて、その巨大なクレーターから引き上げる。

「ふぅ、上手くいったようね」
「ギルマス……仕事でストレスでも溜まってるのか?」
「私たちで良かったら、相談に乗ります」
「ち、違うわ! 別に鬱憤を晴らす為に地面を攻撃した訳じゃないのよ」

 小学生組に誤解されて慌てるヨハン。この行動は単なるストレス発散ではなく、いや、多少ストレスは減っているかもしれないが、効率良くアイスデーモンを狩る為の作戦なのだ。

「さっきアイストードが砕いた氷の地面がずっとあのままだったでしょう? それを見て思いついたの。もしかしたら地面に大きな穴を開けられるかもって」

「あ、そうか!」

 そこで、ヨハンの意図を理解したのだろうメイが喜びの声を上げた。

「ヨハンさんが開けた穴、丁度アイスデーモンのリスポーン地点ですね」
「なるほどな。復活したアイスデーモンは速攻で穴の中へ真っ逆さまって訳か。で、そこを上から集中攻撃。流石ギルマスだぜ」
「ええ。でもせっかくならもう少し召喚師らしい戦い方がいいわね……えっと」

ヨハンはストレージから召喚石を取り出す。

「召喚獣召喚――クワガイガー!!」

 幾何学的な魔法陣から、メカニカルなクワガタモンスターが出現する。その姿に見覚えがあるオウガとメイは目を丸くした。

「ギチィィ」
「ちょギルマス……これ階層ボスじゃねーか!? 大きさもそのままかよ」
「わ、私のトラウマが……えぇ!? っていうかこれ、仲間にできるんですか!?」

「ええ。確か虫のダンジョンを単独かつ初見でクリアすれば手に入るのよ」

 驚く小学生を他所に、ヨハンは涼しい顔でクワガイガーに指示を出し、穴の奥へ移動させる。その様子を見て、オウガはクロスの言葉を思い出していた。クワガイガーを突破し手に入れたスキルをドヤ顔で見せてきた時のことを。

『まぁ、こんなことに気が付くのは僕だけだと思う』

「はは。どうやらお前だけじゃなかったみたいだな」

 オウガは胸のすく思いだった。クロスは確かに凄い。オウガも心の底では天才だと認めてる。けれど。おそらくきっと、クロスでさえ勝てないような連中が、世界には沢山居るのだろう。そう思うと、なんだか胸の重しが取れたような気がしたのだ。

「何してるのオウガ!」
「オウガくん! アイスデーモンの復活が始まったわ。面白いものが見られるわよ」
「どれどれ……うげぇ」

 オウガはその光景に目を覆いたくなる。アイスデーモンたちは肉体が復活すると同時に穴の下へ落下。そして何が起こっているのか理解すらできない内に、待ち構えていたクワガイガーの【放電】によりスタン。動けなくなったところで一匹一匹、丁寧に踏み潰されていく。

「素晴らしいわ。名付けて【アリジゴクシステム】よ」
「えげつねぇ」
「凄いですヨハンさん! けど、クワガイガーのMPはどうするんですか?」

「安心してメイちゃん。クワガイガーはスタンさせた敵からMPを吸収する【充電】というスキルを持つわ」
「凄い! 永久機関が完成しちゃいましたね!」

 それでも足りない時は【マジカルリンク】でヨハン直々にMPを渡すことができる。メイの言うとおり、本当に永久機関のようなシステムだった。

「さて、それじゃあレベルが上がりきるまで、お話でもしましょうか……あら」

アイスデーモンの処理をクワガイガーに任せて小学生組と親睦を深めようとしていたヨハンの元へ、一通のメッセージが届く。

「どなたからですか?」
「煙条Pからだわ」
「あの変た……おじさんからか」
「ええ。何かしら」

ヨハンは恐る恐るメッセージを開いた。

『お疲れ様です。レベル上げならば私が役に立てると思いますので、今からそちらに向かいます』

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第65話 エピローグ

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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