お前のような初心者がいるか!

第54話 黒き暴虐

「――【ダブルスラッシュ】!!」
「――【ブラックフレイム】!!」

 庭に湧いていた敵を殲滅したヨハンとゼッカは城の中に戻り、ロビーに居た敵へ攻撃を始めた。とは言っても殆どは上の階層へと侵攻しており、それほど多くの敵は残って居なかったが。

「このまま上に進めば、ベリアルカーサンを挟み撃ちに出来ますよ」
「ここの敵は倒し終わったし、行きましょうか」
「ええ」

中央の階段を上り、そこからさらに上の階層へと続く螺旋階段を上る。

「そういえば、ベリアルカーサンってどんなモンスターなの?」
「半人半蜘蛛の化け物ですよ。とんでもなく素早くて……攻撃を全く当てられないんです。イベントの海賊王より早いかも」
「じゃあ、あの時みたいに、何か倒す為のギミックがあるのかしら?」
「残念ながら……。解析系スキルを持った人が流した情報によると、スキルでスピードを上げているみたいです」

 ベリアルカーサンの持つスキル【アクセラレーション】。ベリアルカーサンが壁、地面、天井を蹴り飛び上がるだけで、スピードがどんどん加速していくというスキル。その分、防御力は落ちていくのだが、攻撃を当てられない以上、それはデメリットにはなり得ない。

「全く、このイベントの為に作られたようなスキルですよ」

 ゼッカはプンプンしている。当然だ。速度をどんどん上げながらも、こちらが隙を見せれば扉を開いて奥へと進んでしまうのだから。

「なるほど。それじゃあ召喚獣での防御は無理ね」
「ええ。だからこそ、定期襲撃限定の敵なんでしょう。こればかりはプレイヤーが対処するしかありません」

 2Fの扉を開く。すると、本来ここに配置されている筈の上級召喚獣は居らず、ドナルドとレンマがベリアルカーサンと戦闘を繰り広げていた。だが、主に戦っているのはドナルドで、レンマはベリアルカーサンが先へ進まないよう、上への扉を塞いでいる。

「あらあら来たのね~丁度良かったわ☆」

戦闘中のドナルドはヨハン達を見つけると、一瞬だけウィンクする。

「私も参加します!」
「ええ、そろそろコイツ、倒しちゃいましょう☆」
「もちろんです! ヨハンさんは入り口を塞ぎながら、援護をお願いします」
「わかったわ」

 ヨハンはレンマに倣い、自分が今入ってきた入り口を塞ぐように立つ。少しでも不利になると、ベリアルカーサンは扉から逃げていくのだ。それを防ぐ為の作戦である。

 ヨハンが見てみれば、確かに下半身が蜘蛛、上半身が青白い女性の魔物が、物凄いスピードで部屋の中を飛び回っている。そして、時々、通りすがりにドナルドの屈強な肉体を切り裂いている。

 ヨハンはとりあえず、プレレフアの第3のスキル【蝶の狂演】を発動。フィールドに居る味方に3分間のHP・MPが回復し続ける状態を付与する。

 そして、敵を狙って【ブラックフレイム】を撃ってみるものの、当たらない。壁や天井を縦横無尽に飛び回るベリアルカーサンは、どんどん加速する。そして、目で追えなくなったと思うと……。

「キシャーッ!!」

 天井に張り付いて、地面に向かって毒のブレスを放ってくる。その毒々しい息に触れたヨハン達は、たちまち毒の状態異常を受ける。

「ぐぬぬ……確かに厄介な敵だわ」

 海賊王ほど理不尽に強い敵という訳ではない。だが、嫌らしい。倒しにくいという点においては海賊王を超えるのかもしれない。

「アンチポイズンフィールド!!」

 レンマが仲間全体の毒を解除するスキルを使用し、ヨハン達の毒は消え去った。

「ありがとう!」
「助かったわレンマちゃん☆」
「……それより、敵を」

 ベリアルカーサンは再び天井を蹴って加速を開始。ゼッカが攻撃をなんとか掠らせたが、すぐに追いつけなくなってしまう。

「あーんもう! イライラするわー☆」
「ドナルドさん落ち着いて……必ず勝機はあります」
「……良く観察するんだ」

(レンマちゃんの言う通りだわ。観察……観察)

ヨハンは敵の動きを目で追い続ける。

(壁や天井を蹴って直線に進む。その先の壁を蹴って加速……再び壁へ……そうか)

「このモンスターの攻略方法がわかったわ」

ヨハンが叫ぶ。

「マジ!? それじゃあお願いするわ☆」
「任せて……えっと、今回は6人くらいでいいかしら」
「んん?☆」

 ヨハンは【増殖】を発動させ、新たに二体の分身を誕生させる。そして、その分身にも【増殖】を発動させる。こうして、合計6体の分身が現れる。

「……お姉ちゃんが7人……ゴクリ」
「一体何が始まるのかしら☆」
「私にもわからないですね」

見守る3人は固唾をガブ飲みした。

「みんな行くわよ、せーの……【バグ】!!」

 バスタービートルのもう一つのスキル【バグ】を全ヨハンが発動。漆黒の鎧の隙間という隙間から、小さな黒い、メスのカブトムシのような虫がカサカサとあふれ出す。

「ちょっとちょっとちょっと~なんなのあのスキル~ゴキブリ召喚なんて鳥肌が止まらないんですけど☆」
「ゴキブリじゃないです。似てるけど……そうとしか思えないけど、違うんです。というか、ヨハンさんの狙いって……」

 青ざめた顔でゼッカが呟くがもう遅い。7人のヨハンからあふれ出した虫たちは、地面、天井、壁をワラワラワラ覆い尽くしていく。

「……キシャ!?」
 
天井に着地したベリアルカーサンは、再び蹴って飛ぼうとして、止まる。もう、彼女が進む先は無い。彼女が進む先は、全て黒い虫によって覆い尽くされているのだ。

「止まったわね。今よ!」

 ヨハンのかけ声で、黒い虫たちは一斉にベリアルカーサンを覆い尽くす。

「キシャ……キシャアアアアアアアぶぐぐ」
「あわわ……口を開けているから、口の中にも虫が……」
「……酷い」

 虫が敵の全身を覆い尽くすのを確認して、本体であるヨハンが手を握りしめるジェスチャーをすると、虫たちは一斉に爆発する。

そして、ベリアルカーサンの討伐に成功した。

「ふぅ……最終日にしてようやく役に立てたわね……さぁ、この調子で最後まで頑張りましょー! あらどうしたのみんな? 口元を抑えて」

青ざめた表情のドナルドとゼッカ。

「いえ、別になんでも無いですよ?」
「ええ。それに今のヨハンちゃんの戦い方、ギルド対抗戦でも使えそうよね~。グッドアイデア☆」
「そ、そうかしら? じゃあ、もしこの城が攻められる事があったら、試してみようかしら。やろうと思えば、もっと数を増やせるから」
「凄いですヨハン! 最強の精神攻撃!」
「ええ。私たちだけこんな気持ち悪い思いするなんて不公平。他のプレイヤーにも体験して貰いましょう☆」

ドナルドとゼッカは、自分たちが感じた苦しみを他のプレイヤーにも味わって欲しい、道連れになって欲しいと、心からそう思った。

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第55話 開幕

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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