お前のような初心者がいるか!

天才少年クロス参戦

 第一層と第二層を繋ぐ土のダンジョン。このダンジョンの出口に、多くの小学生プレイヤーが集まっていた。
 かつてこのダンジョンでヨハンに絡み、敗走した小学生パーティの面々が運営するギルド【セカンドステージ】のメンバー達である。
彼らは先週このゲームを始めたクラスメイト【クロス】というプレイヤーをここで待っていた。

「なんでアイツを誘ったんだよ……」

 皆早くクロスが上がってこないかと待っていたが、只一人、オウガだけはクロスが自分たちのギルドに入ることを嫌がっていた。

「アイツを入れたら、せっかく作った俺たちのギルドが滅茶苦茶にされるぞ」
「けどさ、俺たち来月のギルド対抗戦で勝ちたいんだよ」
「その為には、天才のアイツの力が必要なのさ」
「ああ。俺たちは大人共に復讐する為なら、なんだってするぜ」
「小学生だからって理由で、俺たちかなり殺されてるからな」

 彼ら小学生プレイヤーは、他のプレイヤーによく殺される。だがそれはGOOプレイヤーのマナーが悪いからではない。彼らが小学生特有のウザ絡みで他プレイヤーに襲いかかるからに他ならない。GOOは「一緒に遊びたい」「手伝って欲しい」と素直に言えば協力してくれるプレイヤーが多いのだ。
 にもかかわらず彼らが殺されるのは、第一声が「いいアイテム寄越せ」等、チンピラまがいな為だろう。つまり自衛の為の反撃でやられているのである。

「いや、あれはお前達が悪いんだろ?」

 と突っ込むオウガだったが、それが聞き入れられる事は無かった。サッカーのクラブチームに所属しているオウガは礼儀というものを厳しくたたき込まれているが、他のメンバー全員がそうという訳では無い。まだ無邪気さと幼稚さを残す彼らの怒りの矛先は完全に大人プレイヤー達に向いていた。そして自分たちがゲームで理不尽に虐げられているという話をクロスにして、彼をこのゲームに誘ったのだった。
 そして待つこと数十分。一人の少年プレイヤーが土のダンジョンを脱出してきた。

「やぁ、来てくれたんだね……えっと、クロス君!」

 現れたのは実年齢12歳の少年、クロス。金色に設定した髪が生来の利発そうな表情に非常にマッチしている。体には見慣れない装備を身につけ、背には大きな弓を背負っている。

「やぁ、待たせたねみんな」

 そして、待っていた他の小学生プレイヤー達に優しく微笑んだ。同年代の女子や年下好きなお姉様なら思わずときめいてしまいそうなスマイルに、オウガは軽く舌打ちした。オウガはクロスと同じサッカーのクラブチームに所属し、同じポジションを取り合っている為、彼を一方的にライバル視しているのだ。逆にクロスにとって、オウガは眼中にない存在なのだが。

「クロス君、もしかして一人?」
「パーティメンバーは!?」

「え、一人でクリアしたけど? 何か不味かったかな?」

「す、すげええええ!」
「クワガイガーを一人で倒すとか!」
「さっすが天才だぜ!」

「ははは、意外と簡単だったよ」

クロスはまんざらでもなさそうだった。

「さて、それじゃあみんなのギルドに入ってあげるけど、僕がギルマスって事でいいんだよね?」

クロスは現【セカンドステージ】のギルドマスターであるゾーマに訪ねる。ゾーマはきょとんとした顔をした。

「え……いや……」
「嫌なのかい? なら僕は引退させて貰うけど」
「おいゾーマ。譲れよ」
「そもそもお前には不相応だったんだよ」
「あ、ああ……わかった。君に任せるよクロス」
「初めからそうしてくれよ、時間が勿体ない」

 ゾーマはメニューを開くと、クロスをギルドに加入させ、さらにギルドマスターの座を譲り渡した。
 その様子を眺めながら、オウガは「ほれ見たことか」と呟く。天才と持て囃されているが、内心では他者を見下しているクロスの性質を、オウガは良く理解していた。

「ありがとうゾーマ。僕にギルドマスターを任せてくれたからには、このギルドを最強のギルドにしてみせるよ」
「あ……ああ。頼んだぜクロス君」
「まず、僕はこのギルドを小学生限定のギルドにしようと思っている」

 そう言いながら、クロスはギルドのメンバーリストを開いた。

「この中に居る中学生以上の人を教えてくれるかな。即除名するから」

「え……いや、それは……」
「いや待ってくれよクロス君!」

 流石にいきなり除名はどうなんだと慌てる小学生達。

「教えてくれないのかい? まぁいいや。ええと。この【クーガ】って人と【†ガブリエール†】て人かな」

全員に鳥肌が立った。当たっていたからだ。この二人こそがセカンドステージの中学生以上のメンバーだったのだ。

「な、なんでわかったの?」
「簡単だよ。名前とレベルかな」

なんてことないように言うクロス。

「僕たち小学生は忙しい。無駄な学校、塾にレッスンにスポーツ。輝かしい未来の為に、今を頑張っている。ゲームが出来るのは息抜き程度の時間だけ。けど大人は違う。もう人生が終わっているから、ゲームをやる時間が沢山ある。ほら、この二人だけレベルが50だろう?」
「いやーでも……」
「他の大人は糞だけど、その二人はマジでいい人なんだよ」
「そうそう。優しいし、攻略情報とかも教えてくれるし」
「辞めさせるのはちょっと」

 小学生といえど、どんな大人にでも逆らう訳ではない。普通に優しくしてくれたプレイヤーには懐いている。しかし、そんな事は知ったことではないとばかりにクロスは声を重くする。

「攻略情報ねぇ。ちなみに……」

 クロスはメニューを開くと、自分のスキル欄を見せてきた。そして、【神の裁き】というスキルを指さす。

「これはアーチャー専用のスキル【神の裁き】。クワガイガーを初見且つ単独で撃破すると手に入るんだけど……その人達は教えてくれたのかな?」
「い、いや……」
「知らないと思う……」
「だよね。まぁ、こんな事に気が付くのは僕だけだと思う」

 クロスは胸を張る。

「それに、僕はユニークスキルとユニーク装備をもう3つ手に入れてる」
「なっ」

 クロスの発言に、今までつまらなそうな顔をしていたオウガも思わず声を上げる。オウガもユニーク装備が欲しくて、色々試しているプレイヤーの一人だった。

「で、ゾーマ。君がかばってる人達、ユニーク装備やユニークスキルの取り方を教えてくれるのかい?」
「いや……そんなの誰にもわからないよ」
「僕にはわかる」
「え!?」
「もう三つも手に入れた。そしてその入手条件を見た。それでもう、残りの隠してあるユニークの入手方法も見当がついちゃった。このゲームの運営も馬鹿な大人がやってるみたいだし、多分合ってると思う」
「流石……天才だ」
「確か、このゲームには500個のユニークが隠されていて、現在見つかっているユニークは100個程度らしい。僕の指示に従えば、セカンドステージに所属する小学生全員にユニークを取らせてあげるよ」

 自分が天才だと信じている男からのこの発言。オウガを除く4人は沸き立つ。自分もユニーク装備を手に入れて、大人達相手に格好良く勝つ事が出来る。そんな姿を夢想する。彼らの脳内に、やさしくしてくれた大人プレイヤーの事は、もう無かった。

「欲しい!」
「頼むぜクロス君!」
「ユニーク取れるってなれば、他の奴らも加入してくれるんじゃね?」

「ふふ、そうだね。勝つためには、もうちょっとメンバーを増やす必要があるね」

 喜び合う小学生達を見つめながら、クロスは誰に言うでもなく、一人語り始める。

「僕達も今年で小学校を卒業する。そしたらもう、こんな風にゲームで遊ぶ時間なんて無くなるだろう。だから、最後の思い出づくりに……大人達と戦争しよう。ふふ、きっと楽しくなるよ」

その独白のようなつぶやきを、オウガだけはつまらなそうに聞いていた。

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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