お前のような初心者がいるか!

第43話 上級召喚獣

「さぁゼッカ! 私のこの風の防御を突破出来るかしら!」

 扇形のユニーク装備【芭蕉剣・羅刹女】を構えながら、ギルティアは不敵に笑う。突風によって尻餅をつかされていたゼッカとコンは起き上がる。

「あの攻撃範囲ならデコイも意味があらへん……厄介なユニーク装備や。あれがあの子の戦い方なん?」

 最果ての剣のギルドマスターであるギルティアの情報は少ない。いや、逆か。彼女は情報が多すぎる。
 戦う時期、戦う場所によって様々なユニーク装備を使い分けるギルティアの真の戦い方を知っている者は、ギルドメンバーでも少ない。だからこそ、情報通のコンであっても、ギルティアは多くのユニーク装備で多彩な戦いを見せるという情報しか持っていないのだ。

「少なくとも私と組んでいた時には、あんな剣持ってませんでしたよ。一体あれからいくつのユニーク装備を集めたのか……」
「いや、そもそも何で沢山ユニーク装備が手に入るん? うちかて、一つも持っとらんのに」
「それがあるんですよ。沢山のユニーク装備を手に入れる方法が。あの子の本来のユニークスキルを使えば」

「話ばっかしてないで掛かってきなさいよー!」

 攻めあぐねる二人に対し、再び剣を振るうギルティア。凄まじい突風がゼッカ、コンの体勢を再び崩す。

「あっははは。近寄る事すらできないの? それが今のアタシとアンタの距離ってわけ?」

 勝ち誇ったように笑うギルティア。ゼッカは悔しさで歯がみする。

「調子に乗って……うおおおお!」

 立ち上がったゼッカはギルティアに真正面から突っ込む。だが再び芭蕉剣を振られ。

「うわー」

 転んでしまう。

「安い挑発乗ったらあかんよ。うちはな、ここでは敢えて負けるんもありやと思ってる」
「はぁ!?」
「あんな提案しておいて何言うとる思うかもしれへんけどな。本番はあくまで来月のギルド対抗戦や。手の内見せすぎるのもどうかと思うし」

 負けたところで、自分たちには何のデメリットもない。ただ約束通りの金額で召喚石を売るだけだ。本命のヨハンの手の内を隠しきり、その上ギルティアの手の内を見る事が出来た。この状況だけで、実質コンたちの勝ちと言っていいだろう。

「コンさん。私は負けて構わない。そんな気持ちで勝負に挑んだ事は、一回もありません! 常に全力!」
「頑固やねぇ……まぁそういうん嫌いやあらへんけど。だったら協力したる」
「は、協力……?」
「いいやちゃうな。一緒に勝つ……やね」
「はい! 私たちで勝ちましょう!」

コンは立ち上がると、召喚石を取り出す。そしてそれを自身の拳銃型の魔法杖【ディーパークラック】のスロットにセットする。

「何? 策でも見つかったの? だったらやって見なさいよ!!」

ギルティアは再び芭蕉剣を振るう。

「「きゃっ……」」

 ゼッカ、コンは再び地面に転ばされる。だが、転んでも尚、コンはギルティアに向けて銃を撃つ。
しかしその弾丸はギルティアに命中することはなく、彼女の足下に着弾する。

「はっ! 当たってないんですけどー?」

 笑うギルティア。だが。

「召喚獣召喚――【管狐】」

 ギルティアの足下、丁度弾が着弾した辺りに魔法陣が浮かび上がり、蛇のような身体をした狐の召喚獣が出現する。

「こん」
「な……いきなりこんな近くで!?」

 コンの持つ特異な銃型の杖【ディーパークラック】は攻撃魔法を銃のように撃つことが出来るが、その真価は別にある。本来サモナーのすぐ側にしか召喚できない召喚獣を、銃の着弾した地点で召喚できる。

「はっ! こんな雑魚を召喚したって――【換装】――【崩雷剣・クワガイガー】!!」

 ギルティアは再び換装のスキルを使用し、チェンソーのような刀身を持つ剣へと持ち替える。そしてそれを管狐に向かって思いっきり振り下ろす。

だが。

 管狐はガッツのスキルを発動。スタンの状態異常を受けるものの、HP1で耐える。

「何ぃ!?」
「うちはここでスキル発動――【ターンオーバー】」

 コンが召喚獣とパーティーメンバーの位置を交換するスキル【ターンオーバー】を発動。ギルティアの側に居た管狐と攻撃準備の整ったゼッカの位置が入れ替わる。

「ゼッカ!? ――しまっ」
「はあああああああああ」

 ゼッカの白い剣の連続突きがギルティアの足を掠める。大したダメージにはならない。だが。

 ゼッカはこの攻撃によって4つの【ガッツ】を獲得した。そのガッツ全てを消費し、黒い剣をギルティアの身体に叩きつける。

「ぐっ……ゼッカああああああ!」

 大ダメージを受けながらも、ギルティアを倒すには至らない。ギルティアは手に持つ崩雷剣を強く握ると、剣に込められたスキル【放電】を発動させる。刀身から迸る稲妻がゼッカに襲いかかるが。

「こんーっ」

 その電撃を受け止めたのは再び現れた管狐だった。再び【ターンオーバー】を発動させたコンにより、ゼッカは既にギルティアの間合いから離脱していた。

「あのギルマス……大したことあらへんな」
「ええ、沢山のユニーク装備を持ってはいますが能力は並、プレイヤースキルは私と大差ないです……あと一個ガッツを取れていたら、今の一撃で勝てていたでしょう」

 同じギルドに居た頃。ゼッカとギルティアに、プレイヤースキルの差は殆どなかった。あったとすれば、それは装備の能力の差。ユニーク装備を自在に操るギルティアに、ゼッカはいつも勝てずにいた。今回それを埋めたのは、仲間の存在。

「このままいけばギルティアには勝てます。だからこそ、あそこで黙って見ているロランドさんが怖いんですが」
「あのまま大人しくしてくれてはるとええんやけど」

 ロランドは未だ動かず、フィールドの壁に寄りかかってこちらを見ている。一方のギルティアはまた新しい武器を取り出す。彼女が氷のような刀身を持つ剣を天に掲げると、クリスタルレオとの戦闘中に見た浮遊クリスタルが6枚出現する。

「行け!」

 そしてギルティアのかけ声と共に、こちらに飛んできた。

「剣士なんに、飛び道具とかズルいわ~。ゼッカちゃん、あれ打ち落とせる?」
「余裕です。けど、一体何を?」
「ちょっと大物を呼ぼう思うてな」
「わかりました時間を稼ぎます」

 ゼッカは一歩前に出ると、二刀流攻撃スキルを発動させ、華麗な連続技で6枚のクリスタルを全て叩き落す。
 だが、ギルティアが剣を掲げるだけで、新たなクリスタルが出現する。そしてそれは再びゼッカ達へと襲いかかってくる。

「今のうちに……」

 コンはストレージからアンゴルモア鉱石を取り出す。消費する事で、一度だけMPの消費を肩代わり出来るアイテムだ。これにより、自分の最大MPを超えた召喚が可能となる。
 コンは取り出した上級召喚獣の召喚石をディーパークラックにセットする。そして、ギルティア目掛けて弾丸を放つ。
 弾丸は氷の浮遊クリスタルを縫うように進むと、ギルティアの黄金の鎧に命中する。ダメージはない。だが。

「く……しくった……」

 ギルティアの体を中心に、魔法陣が浮かぶ。そしてそこから、無数の植物のツタが現れ、ギルティアの体に絡まり、締め上げるように形を為していく。

「く……何よこれ……私がこんな!」

「捕獲完了どす。召喚獣召喚――上級【ハイドラプランツ】!」

 這い出た無数の植物は混ざり合い、絡み合い……そして……竜の形を成していく。

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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