小説

6 導かれし者たち

2022年10月13日

「いやいやっ! 本当に良く来てくれた!」

 約束の日時。ミュウが氷のダンジョン入り口に到着すると、ハゼル、そして見たことのないプレイヤー4人が待っていた。

 内三人は小学生くらいのプレイヤー。男子2人と女子1人。男子が2人とも【守護者】で、女の子が【槍使い】のようだ。レベルは30程度。
 
 そして残りの一人は黒い忍者装束を纏った女性プレイヤー。こちらは大学生くらいの年齢だろうか。黒い狐耳と尻尾、切れ長でクールな目、口元はマスクで覆われている。ミュウから見ても別格、明らかに強者のオーラを纏っている。

 遅刻したわけでもないのに、自分が最後だったことに引け目を感じたミュウはぺこりと頭を下げる。

「ミュウです。剣士です。レベルは一応50ですが、復帰勢です……」

 すると、それを自己紹介タイム開始ととったのか、小学生チームが続く。

「私はヒメ。レベルは34。槍使いよ。よろしくね」

「僕はセカンド。レベルは30。守護者職でヒメちゃんの彼氏だよ」
「俺はサード。レベルは同じく30。守護者でヒメちゃんの彼氏だぜ」

「???」

 何かおかしかったような気がしたが、彼女たちを集めたハゼルがにこやかに頷いていたので、ミュウもスルーすることにした。

「私はほろび。レベルは50で職業は忍者。よろしくお願い致しまする」

(めっちゃキャラ濃い人出てきた。ってか、職業忍者?)

 GOOに忍者という職業はない。ほろびと名乗ったプレイヤーの本来の職業は【破壊者】である。だが、滅の言ったことも完全に間違いではない。

 GOOで最もプレイ人口の少ない職業と言えば、ダントツで召喚師である。だがこれは召喚師が不人気だったわけではなく、仕様変更による大幅な弱体化の末にプレイヤーが引退しまくったことが原因である。

 ではそういった要因を取り除いたときの不人気職がどれなのかというと、実は破壊者なのである。

 こちらは単純に人気がないという悲惨ぷりで、何度か運営によるテコ入れが入っている。例を挙げれば【侍】や【忍者】など、特殊スキルを入手することで、それっぽい戦い方ができるようになるというテコ入れだった。

 ほろびも破壊者を選び、そして忍者スキルによって忍者の戦いを身につけた、そんなプレイヤーの一人なのだ。

「あの、滅さん」

「なんでしょうか、ミュウ殿?」

「殿……。滅さんはレベル50。氷のダンジョンなんてとっくにクリアしているんじゃないですか?」

 土のダンジョンや氷のダンジョンといった、次の階層へ進むためのダンジョンは、一度クリアしたプレイヤーはもう挑戦することはできない。

 だが。

「うふふ。ご名答。確かに私は実装当日に氷のダンジョンをクリア済み。本来ならばもう二度とこのダンジョンには挑戦できないはずでした。ですが、実は先月のアップデートで、その制約は解除されたのです。今は上級者がお手伝いすることが可能なのですよ」

「そ、それじゃあ初心者のためにならないんじゃ……」

「うふふ。ミュウ殿は真面目ですね。私もそう思いまする。ですが、運営は実力うんぬんより、早く新しい階層に上がってきて欲しいと思っている。私はそう解釈致しました」

「な、なるほど」

「近々第4層実装の噂もありまする。もしかしたらそこで、全プレイヤーを巻き込んだ大規模なイベントがあるのでは? と、我があるじも申しておりました」

「あるじ……?」

「ハイハイ。お話はそこまでにして」

 ミュウと滅の会話をハゼルが手を叩きながら遮った。

「それじゃあ作戦会議に移ろうか」

「ふむ。ハゼル殿が中級召喚術を扱えないのですね?」

 滅が確認すると、ハゼルは力強く頷いた。

 中級召喚術とは召喚師が得られるスキルの一つである。これがなければ【上級召喚術】も習得できず、強力な召喚獣を呼び出すことができない。
 だが、中級召喚術はランキングイベントに参加しなければ入手することができず、次のイベントは一週間以上先と、ハゼルが日本に居る間には開催されない。

「しかたない。単純に運が悪かったよ」

 アハハと笑うハゼル。

「だから、メインアタッカーはみゅうみゅうに任せる」

「えっ!?」

「確かに。連絡頂いたサモンソードなる面妖な剣。あれならクリスタルレオにもかなりのダメージを与えることができるでしょう」

「で、でも。ハゼルさんは初心者だし、私は剣士だし……そもそも召喚石を持ってないんですよ……」

「それならばご心配無用にて」

 にっこり笑うと、滅はストレージから大量の召喚石を取り出し、ミュウに渡す。

「レンタルでございます」

「えええ!? なんでこんなに!?」

 ミュウは驚いた。当然だ。破壊者の滅がこんなにも沢山の召喚石を持っているのだから。

「実は私の主が召喚師の人口増加を企んでおりまして。それゆえ、私は第二層にて、初心者召喚師のお手伝いをしておりまする」

「へ、へぇー」

 よくわからなかったが、とりあえず召喚師のサポートをしている変わった人なのだということを、ミュウは理解した。

「そして、ハゼル殿にはこれを」

 滅は、不思議な輝きを放つ水晶のようなアイテムをハゼルに手渡した。首を傾げるハゼルに、滅が語る。

「これは【トランスコード】というアイテムにて。ハゼル殿の持つ召喚獣【ヒナドラ】に使用すれば、例外的に最強クラスの召喚獣クロノドラゴンを特殊召喚できまする」

「へぇ、まるでワープ進化だ。それじゃあ使ってみようかねぇ」

「ちょっ、ハゼル殿、何をして!?」

 驚く滅。無理もない。ハゼルはトランスコードを指示された【ヒナドラ】ではなく、【イヌコロ】に使ったのだから。

「おっ! 【進化召喚】を覚えたね」

「全く。ですが、ワーフェンリルも強力なことには変わりなく。良しとしましょう」

「ねぇ。私たちには何かないのかしら? アイテムが欲しいのだけれど」

 すると、しばらく待たされていたヒメたち小学生ズが、滅の裾を引っ張った。

「うふふ。貴方たちの職業は槍使いと守護者。なら、私から与えられるものは何もなしです。あと、上級者へのクレクレ行為はマナー違反にて。次にそのようなことを言ったら即座に通報致しまする」

「なんか私たちに厳しくない!?」

 涙目になる小学生ズ。自分は大量に貸して貰った手前、なんだか申し訳なくなるミュウ。ハゼルも同じだったのか、小学生ズの肩をバシバシ叩く。

「いてぇなクソ女」
「触るなよ」

「おっとそんなコトを言っていいのかい? クリアできたら、お礼にお姉さんが課金アイテムをプレゼントしようと思ってたんだけどな~?」

「粉骨砕身で頑張ります」
「お姉さんよく見ると綺麗ですね」

「わ、私も頑張るわ!」

 こうして一致団結? した六人の即席パーティは、氷のダンジョンへと踏み込んでいく。

7 決戦

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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