小説

5 サモンソード

2022年10月12日

「プレイヤースキルは一先ず置いておくとして……装備もキツいなぁ」

 三日後。

 とりあえず昔の勘を取り戻そうと考えたミュウは、モンスターと数回ほど戦闘を行った。だが、思ったように体が動かず、かなりギリギリの戦いを強いられてしまった。

 そこで、そういえば装備を変えなくちゃと思い至るのだが、ストレージには禄な装備が残されていなかった。

「引退するとき、殆どゼッカにあげちゃったの思い出した……。せめてアビスがあればなぁ」

 アビスとは、【深海剣アビス】のことである。ゼッカとギルティアと三人で遊んでいた頃に手に入れた、ミュウの元・愛剣である。

「う~ん。とりあえず手持ちのアイテムを売って資金にするかな……プレゼントBOXも溜まってるし」

 ログインボーナスや復帰キャンペーンが大量に貯まっているプレゼントBOXを開く。一つずつ確認しながらストレージに放り込んでいると、妙なプレゼントを発見した。

「なんだろこれ……えっと」

 ミュウはメッセージを読み上げる。

『【もふもふ動物園】をお買い上げ頂きありがとうございました。セーブデータを確認できましたので、キャンペーン品をお送り致します』

 そして、送られてきたものを確認する。どうやらそれは剣士用の武器のようだった。

「剣の装備だ。サモンソード……? やった、あまり性能は高くないけど……ショップで買えるヤツよりは大分マシだよね!」

 性能は型落ち感が否めないが、ステータスの上昇値はギリギリ合格ラインだと納得するミュウ。少なくとも今から剣を用意し始めることを考えれば、その時間が短縮できるだけ、ラッキーと言ったところか。

「へぇ~これがキャンペーン装備か。初めて見たな」

 GOOを運営する【神永エンタープライズ】は、VR技術を独占しており、様々なゲームを販売している。
 同社が発売するゲームのセーブデータがあれば、様々な特典を受け取ることができるのだ。これはGOOに限らず、他のVRMMOでも同じである。

 もしかしたらどこかにGOOのセーブデータがあることで特典が貰えるゲームもあるのかもしれない。

「凄いよね。私たちと同じ高校生が、こんな世界を造っちゃうんだから」

 10年前。当時高校生だった、神永エンタープライズの現総帥・神永光太郎かみなが こうたろうはVR技術の基礎を開発。
 この技術により、人類は新しいステージに進むと、当時世界中が期待していたという。

 しかし自分の開発した技術が戦争や大衆洗脳、宗教のために使われることを嫌った彼は、会社を設立。VRの技術を完全ブラックボックス化し自社で独占。ゲームメーカーや玩具メーカーを次々と吸収合併し、今や日本をエンタメで支配する一大組織である。

 噂ではプログラマーですら専用ツールを介して、VRのシステムの根幹を知らないままゲームを作っているというのだから、その情報管理の徹底ぷりには驚きを隠せない。

「天才か……はぁ。私も天才に生まれて、悩みなく生きたかったなぁ」

 進路、勉強、恋、そして友人関係。現在16歳のミュウには悩み事がいっぱいだった。

「おっと、暗い。暗いよ私。とりあえず新装備を試さないと」

 メニューにて先ほど手に入れたサモンソードを装備する。すると、ミュウの手に奇妙な形の剣が現れた。

 その剣の刃渡りは大分短く、30cm程。最早短剣である。そして全体的に安っぽいプラスチックのような装飾があり、柄の部分には銃のようなトリガーがある。非常に玩具ぽい。ミュウは弟が小さいときに振り回していたウルトライダーのおもちゃを思い起こす。

「で、この穴はなに?」

 剣の中央に穴が開いており、何か別のパーツを嵌められるようになっている。

「待って……この形ってもしかして……」

 何かをひらめいたミュウは、ストレージを漁る。そして、以前拾った【ブラックファング】の召喚石を取り出した。

「やっぱり! ぴったりだ!」

 ミュウの閃き通り、ブラックファングの召喚石はその穴にがっちりと嵌まった。

「で……どうするの?」

 ミュウは10分ほど色々試す。そして、柄の部分についていたトリガーが怪しいと思い、一度引いてみる。

『チャージ』

 トリガーを引くと、剣からそのような音声が鳴った。やけにノリの良い音声だった。

「ええ、何これ面白い。えい、えい、えい」

『チャージ』
『チャージ』
『チャ『チャ『チャージ』

 トリガーを引く度に音声が鳴る。すると、10回ほどで音が鳴らなくなった。だが、その変わりに、剣は稲妻とオーラを纏い、今にも爆発寸前といった感じである。

「これで攻撃準備完了ってことかな……じゃあ……えいっ」

 とりあえず、剣を振ってみた。

『フルチャージ!!! ファイナルアタック・ブラックファング!!』

 と、やけにハイテンションな叫び声が剣から鳴り響き、さらにブラックファングを模したオーラが放たれる。
 そのオーラはフィールドの巨大な岩にぶつかると、易々とそれを粉々にした。

「す、凄い!」

 その破壊力に素直に喜ぶミュウ。

「隙が大きいから対人戦には向かないけど……別に対人はもうしないし、十分だよ。ありがとうおばあちゃん!」

 もふもふ動物園を買ってくれたおばあちゃんに感謝するミュウ。これで後は適当な装備を見繕えば、準備は完了である。

 その時だった。

 ミュウの元に、ハゼルからのメッセージが届く。

『ハローみゅうみゅう。

協力者を見つけた。

集合時間は4日後の19:00

氷のダンジョン入り口に集合だ』

6 導かれし者たち

「いやいやっ! 本当に良く来てくれた!」  約束の日時。ミュウが氷のダンジョン入り口に到着すると、ハゼル、そして見たことのないプレイヤー4人が待っていた。  内三人は小学生くらいのプレイヤー。男子2人 ...

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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