「召喚獣召喚――イヌコロ!!」
「わふ!」
その夜、日付が変わる頃。
ログインしたハゼルは第一層はじまりの街に向かうと、周囲に誰もいないことを確認してから召喚獣を召喚する。
幾何学的な魔法陣から、白い犬型のバチモン・イヌコロが姿を現した。
一通り首を撫でてから、ハゼルは自らの相棒に別れの挨拶を告げた。
「私は明日アメリカに戻る。もう日本には戻らないだろう。だからお前とはお別れだ。……短い間だったが、また会えて嬉しかったぜ相棒」
「わふ?」
イヌコロはつぶらな瞳でハゼルを見据えたまま、可愛らしく首を傾げた。
「ははっ、そりゃわかんねーよな。本当にすまんなぁ……ごめんね」
わしわしと頭を撫でながら、こんなことならミュウに預けてしまえば良かったと後悔した。だが、もうミュウと会うつもりはなかった。
彼女の中では、最後まで格好良い大人でいたいと思ったのだ。
見栄っ張りで格好つけたがりなハゼルのちょっとした意地。
「わっふ」ガブリ
「痛っ……あ、ちょ待てよ。どこ行くんだよ」
その時、イヌコロは頭を撫でていたハゼルの手を噛んだ。そして、何かを見つけたのだろうか、向こうの方へと駆けていく。
「おいおい、どこへいくんだ?」
その姿を見失わないように注意しつつ、しかし、歩いて追いかける。
『会っていかないんですか?』
「会わないよ」
思い浮かぶのは、先ほど少女から言われた言葉。この電子の世界でできた、歳の離れた友達のことを、ハゼルは忘れないだろう。
彼女と共にVRの異世界を旅したこの二週間は、ハゼルの中に暖かく残っていた。
『いつか。いつかもっと科学が進歩したら。私たちのバチモンに、きっと会える気がするの』
かつて少女が語った未来は現実となった。そして、少女たちが夢想した電脳世界で、彼女たちはすれ違えた。
「それでいい。それだけで、十分に奇跡だ……だろ?」
しばらく歩く。
「ここは。あの河川敷に似ているな。いい場所だ」
そんなことを思いながら、自分の相棒であるイヌコロを見つけると、どうやら何かとにらみ合っている。
その相手は同じくバチモンの【ヒナドラ】で、お互いは「うううう」と唸りながら、顔と顔がくっつくくらいの距離で睨み付け合っている。
「はは、そういえば君ら、仲悪かったね。ヒナドラね。一体だれのバチモンだ……よ……」
ハゼルは呆れて笑いながら、ヒナドラの召喚主を捜す。
そして、息を呑んだ。
「もう、置いていくなんて酷いわヒナドラ……」
向こうから、ヒナドラの主人と思われる女性がやってきて、イヌコロからヒナドラを引き剥がす。ハゼルもそれに倣い、イヌコロを腕で抱えた。
そして、何も言えないでいたハゼルより先に、女性は嬉しそうな声色で言った。
「それ、もしかしてあなたのバチモン?」
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【ログ】サモンソードなろう掲載時の感想記録
このスピンオフ小説をなろうに掲載していた際に頂いていた感想の記録です。 楽しんで頂いた方々の熱をここに記録として残しておくことをお許しください。 感想一覧 -------------------- ...
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