白亜の城攻略を目指すヨハンたち一行の前に立ちはだかったのは、ギルド【最果ての剣】唯一の召喚師、クリスター。
猫耳に青い軍服を装備した、黒い髪の少女である。年齢はゼッカたちと同じくらいだろう。
「驚いたわねェ。まさか最果ての剣が召喚師を抱え込んでるなんて☆」
召喚師たちとその他のトッププレイヤーたちの間には確執がある。
挑発でもなんでもなく、ただ純粋に驚いているドナルドの質問にクリスターはなんでもないように、涼しい顔で答えた。
「因縁というやつですか。まぁ、私にとってはくだらないことですよ。ヨハンさん。実は私も、貴方と同じくらいに……もっと正確に言うと、バチモンコラボイベントの少し前にこのゲームを始めた新参なんですよ」
なので、トッププレイヤーたちとの間にこれといった確執はない。クリスターはそう言いたかったのだが、ヨハンは別のところに食いついた。そして、急にそわそわし始める。
「え……? ということは、貴方もしかして、バチモンファンなのかしら?」
もしかしたら友達になれるかしら? そんなことを考えていたヨハンだったが、速攻で裏切られる。
「ファン? まさか。自分が生まれる前のアニメなんて、普通見ませんし。そもそもあんな化石みたいなアニメ、10代の私が見てるわけないじゃないですか。デザインだって古くさいしですし。まぁおじさんおばさんにはお似合いのキャラクターだとは思いますけど?」
「……ロス……ゾ」
「落ち着きなさいヨハンちゃん。見え見えの挑発よ☆」
「そ、そうね。一瞬で倒しちゃったら勿体ないわよね。もっとじっくりことこと……ことこと……ころころ……」
「そういうことじゃ無いわよ~☆」
「フッ。来ないならこちらから行きますよ」
ドナルドがヨハンを羽交い締めにしている隙に、クリスターは召喚石を取り出した。
そして、それを自身の足下に叩きつけると、クリスターを包み込むように魔法陣が展開する。
「実は私もユニークスキル持ちでしてね――サモンライド!」
クリスターの体が光に包まれると、その姿を大きく変える。
背格好は2メートル程度まで伸び、白くゴージャスな甲冑とマントを纏った姿はまさに女帝といったところか。
「あの娘、もしかしてモンスターに変身しちゃったの~? 驚きだわ☆」
ユニークスキル【サモンライド】。
中級、上級の召喚獣の姿に変身し、その召喚獣のステータスを自身のステータスに加える。
さらに、スキルも使えるようになるという強力なスキルである。このユニークスキル一つでクリスターはギルティアの信頼を勝ち取ったのだ。
「凄い……凄いわそのスキル……私もやりたい!」
目を輝かせるヨハン。どうやら自分がバチモンになる姿を想像しているようだ。しかし。
「残念ながらこのスキルはユニークスキル。私しか使えないんですよ」
「うう~そうなの……残念だわ」
「そんなことよりヨハンちゃん。あの子が変身した召喚獣、一体どんな能力を持っているのよ☆」
クリスターが変身したのは上級召喚獣・天帝ゼルネシア。
ロイヤルガードを統べる王である。自軍のロイヤルガードを使用することで様々な能力を発揮する。
「――【ロイヤルガード招集】! 飛びかかれ」
クリスターの前に魔法陣が5つ光ると、中からロイヤルガードが姿を現す。そして、ドナルドとヨハンに飛びかかる。
「ゼルネシアはロイヤルガードを呼び出したり、自分のダメージをロイヤルガードに押しつけたりできるわ」
「なるほどそれなら……コイツら全部殺っちゃえばいいって訳ね☆」
ドナルドがロイヤルガードの内一体を殴り飛ばす。その勢いで吹き飛んだロイヤルガードは後続のロイヤルガード二体とぶつかり、三体が同時に消滅した。
さらにヨハンはブラックフレイムで残り二体を始末する。
「あっけないわ……あっけなさ過ぎる……まさか」
「そう。そのロイヤルガードは囮に過ぎません。続けて――サモンライド!」
クリスターが再び召喚石を地面に叩きつける。すると、鎧の頭部からオオカミの耳が伸び、腰の付近から尻尾も生える。
「まさかそれ、重複できちゃうワケ?☆」
「ふふ、その通りです」
サモンライドはなんと重ね掛けが可能なスキルである。能力もスキルも増えていくが、再度サモンライドするためには30秒の時間が必要なのだ。ロイヤルガードによる攻撃で、まんまとその時間を稼がれてしまった。
「スキル発動――【グレイプニール】!」
クリスターがワーフェンリルのスキルを発動させると、ヨハンの足下から鎖が伸び、体を縛り付ける。さらに連続で発動される【デモンフリーズ】によって、ヨハンの全てのスキルが封印された。一時的にではあるが、【暗黒の遺伝子】の効力も失われた為、ヨハンの筋力数値はとても鎖を引きちぎれるものではなくなる。
「あれ……これもしかしてマズいのかしら」
「ヨハンちゃん今助けるわ☆」
「させるわけないですよねぇ――ロイヤルガード招集! 足止めの陣!」
クリスターはヨハンの鎖を引きちぎろうとしたドナルドの周囲にロイヤルガードを呼び出すと、全力で足止めさせる。さながらバスケのディフェンスのようだ。
「アンタたち、邪魔ねぇ☆」
明らかに苛立つドナルドを他所に、クリスターはヨハンに襲いかかる。
拳を構え、ワーフェンリル最後のスキル【カイゼルフィスト】によって決着をつけるつもりなのだ。
デモンフリーズによって防御力もゼロ、さらに煙条Pやダルクの支援も受けられない状態。
かなりピンチといったところか。
「ず、ずるいわ! バチモンを馬鹿にしておいて、でも能力は使うなんて!」
「ふふ、私が召喚獣を選ぶ基準はデザインでも元ネタでもなく、強さなんですよ……ゲームなんて強さが全てですから。さぁこれで最強のサモナーがどっちか決まりますね――カイゼルフィスト」
「ふっ、甘いわね。クロノドラゴン!」
「しまっ――」
クリスターは自分が攻撃を受けると思ったのだろう。咄嗟にバックステップで、降下してくるクロノドラゴンから距離を取る。だがヨハンの狙いは、クロノドラゴンに鎖を破壊してもらうことだった。
「ふふ、クロノドラゴンに窮地を救われる。なんて至福なのかし――ぐえぇ」
だがクロノドラゴンの助け方は、ヨハンが期待した、腕で優しく助けられるという妄想を超えていた。
クロノドラゴンは鎖をヨハンごと口に取り込むと、、バリバリガリガリと咀嚼することで鎖を破壊した。
「ち……ちょっとちょっとぉ~大丈夫なのヨハンちゃ~ん☆」
ロイヤルガードを粉砕し駆けつけたドナルドも、流石に声が引き攣った。
「大丈夫よドナルドさん。召喚師は自分の召喚獣の攻撃でダメージを受けないのだから。寧ろ……イイ!」
クロノドラゴンの口からはみ出たヨハンの足が元気にバタバタと動き、無事だと言うことを告げている。
「そう……アンタがいいならそれでいいわ~☆」
「うわ……なんなのコイツ……」
今更ながらに目の前にいる連中のやばさを理解したクリスターは、次の攻撃の為の召喚石を取り出し構える。
「ぐるううう……ぺっ」
「きゃうん」
そして、ようやくクロノドラゴンの口から脱出した……いや、まるでガムのように吐き出されたヨハンは立ち上がると、不敵に笑う。
「うふふ、それじゃあ第二ラウンドと行きましょうか」
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第100話 終結する最果ての剣
GOOの召喚獣は、初級召喚獣でLv10のプレイヤーと同等。ステータスオール80程度。 中級召喚獣でLv30のプレイヤーと同等。ステータスオール150程度。 そして上級召喚獣でLv50のプレイヤーと同等 ...
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