お前のような初心者がいるか!

第86話 殺したかっただけで死んでほしくはなかった

「えっと……ギルマス……?」

 オウガは動揺しつつも、空から昆虫と共に舞い降りたギルドマスターに尋ねた。色々と聞きたいことはあったが、同時に何も知りたくないという感情も湧き上がる。

「フッ、危ないところだったわねオウガくん」
「敵の前でぼーっと突っ立って。迂闊だよオウガ」

と、ゼッカからは叱責を受ける。色々と言いたいことはあったのだが黙って謝っておいた。

「それじゃ、私はレンマちゃんの応援に行ってきます」

 と言うと、ゼッカは物凄いスピードで城の中へと入っていった。城の中では現在、侵入したセカンドステージメンバーの7人が、3Fにてクワガイガー・クリスタルレオと交戦中である。そこへ加勢に行ったのだろう。そして去り際に「君なら必ずライバルに勝てるよ」と、オウガへ激励を送った。

「さて、それじゃあ私たちは、庭に残っている敵をなんとかしましょう」
「うす。クロスは……」

 その時だった。金色の閃光が、二人の間を突き抜け、城の中へと伸びていく。それはクロスの放ったアウルヴァンディルの矢。そして、城の奥から「ギイイイイイ」という断末魔が聞こえた。

「今の声は……」
「どうやらクワガイガーがやられたようね」

二人は空中に浮かぶクロスを睨む。

「あれがオウガくんのライバル……クロスくんね。可愛い顔してるわ。煙条Pと組めば、アイドル化も狙えるかも」
「中身は全然可愛くないっすけどね」

オウガは悪態をつく。

「よし、それじゃ、あの子はオウガくんに任せるわ。これを使って頂戴」

ヨハンは「じゃじゃーん」と、横に居たキングビートルを指さした。

「そういえば気になってた。これなんすか?」

「クロノドラゴンやクワガイガーすら超える究極の召喚獣。その名も究極変態キングビートルよ。親切な人から譲って貰ったの。これに【モンスターライダー】で乗れば、君は無敵よ!」

「ギルマス……嬉しいんですけど」

オウガは言い辛そうに口を開いた。

「こんな凄い召喚獣を使って勝っても……俺の実力で勝ったって、堂々と言えないと思うんです。いや、色々装備とか手伝って貰っておいて何を今更って感じなんすけど。でも、ヤツとはできるだけ対等な条件で戦って勝ちたい。何より、自分の力がどれだけ通用するのか知りたい! だから……」

「なるほど。それもそうね」

ヨハンは納得した。

 ヨハンとしても、可愛い弟分が勝つための手助けを色々としてやりたい。だが、最後は自分の手で勝ちたいというオウガの気持ちも大事にしたかった。

「だから、何か飛べる召喚獣を貸してくれれば――「なら、私があの子を地上に引きずり落としましょう」
「へ?」

オウガは猛烈に嫌な予感がした。

「クロスくんの頭上の三重のリング。ゴッドヘイローだっけ? あれを破壊すれば、彼は飛行能力を失うのよね?」
「ええ。そうっすけど」

 ゴッドレイジはオウガがセカンドステージから抜ける前からクロスが持っていたユニーク装備だ。なので【ゴッドレイジ】と【ゴッドヘイロー】の二つの能力はオウガも知っていた。

 ゴッドレイジの持つゴッドヘイローを発動させると、使用者の頭上に三つのリングが現れる。

 それがついている間は無制限に飛行可能だが、リングにはHPが設定されていて、それがなくなると破壊される。

 そうなれば、24時間は再使用不可能となる。

 飛んでいる限りクロスからの攻撃は5倍のダメージとなってしまうので、彼と敵対した際はヘイローの破壊が最優先事項だった。

「あの……だからリングの破壊は俺が……」
「見てオウガくん! クロスくんが矢を構えたわ!」
「あ、本当だ!」

オウガが見上げると、上空のクロスはアウルヴァンディルの矢をゴッドレイジに装填していた。

「ようやく出てきたねオウガ。そしてその隣は……お前のギルドの最強ギルドマスターかい? いいね。そいつを倒せば本当にお前たちは終わりだよ」

 上空のクロスはニヤリと笑うと、地上に居るヨハンに対しスキル【必中】を発動させた。最早【視覚共有】を発動させるまでもない目視での発動だった。

「くっ……あいつ、今度はギルマスを狙うつもりか」
「面白いわね。受けて立つわ」
「ギルマス……その構えはあの!?」

 ヨハンは久々にヘラクレスオオカブトの構えを取る。上級召喚獣のスキルを温存する関係上、クロノドラゴンの【ジオサイドフォース】は使えない。ならば中級でも高火力のバスタービートルの【テラーズブラスター】で、クロスの矢を相殺するつもりのようだ。

「けどバフもなしに相殺できますか……?」
「任せて。考えがあるの」

オウガは胸騒ぎを感じたが、ヨハンに何か考えがあるのだろうと押し黙る。

「はっ! はははは! オウガ、お前のギルドマスターは愚かだなぁ!」

そんな地上のヨハンを見て、クロスは笑う。

「飛翔中にゴッドレイジから放たれた矢は相殺されないんだよぉ!」

 クロスはヨハンのポーズを笑った訳ではなく、ヨハンが高火力スキルによって矢を相殺しようとしていることに対して、愚かだと笑ったのだ。

 だがその台詞が地上のヨハンたちに届くわけがなく。

「なんだか物凄く笑われているわ……」
「落ち着いてくださいギルマス……アイツは大人を嘲笑するのが好きなんです」
「そ……そうなの? なら良かったわ。いや……やっぱりダメね。目上を敬えとは言わないけれど、それなりの礼儀ができてないと将来苦労するわ」

ヨハンは某後輩を思い浮かべながら呟く。そして、そんなやり取りをしている間に。

クロスの準備が整ったようだ。

「さぁ食らえ! ――ゴッドレイジ!!」

 超強力な強化解除能力を持つアウルヴァンディルの矢がヨハン目掛けて放たれる。矢は黄金のエフェクトを纏い、ヨハン目掛けて飛んでくる。

「ギルマス……早く撃たないと!」
「……まだよ」

 ヨハンはスキルを発動しない。ギリギリまで矢を引き付けている。そして、矢がすぐそこまで迫ってきたその時。ようやくヨハンはスキルを発動した。

「――シフトチェンジ!」

 ヨハンが発動したのは【テラーズブラスター】ではなく、自分と召喚獣の位置を交換する【シフトチェンジ】だった。そして、ヨハンが居た場所には、初級召喚獣のゴーストが出現する。

「ゴースト……一体今までどこに……? ギルマスは!?」

アウルヴァンディルの矢はゴーストを避けると、空に浮かぶクロスの方へ軌道を変えた。

「ヨハンが消えてゴーストが現れた? 何故だ。なんで矢が僕の方へ戻ってくる? まさか……まさか!?」

 そこでようやくヨハンの狙いに気づいたクロスは、後方を振り返る。すると、そこにはヘラクレスオオカブトの構えのままのヨハンが居た。

「そうか、お前……戻ってくる前にあらかじめゴーストを召喚しておいて……」
「ええ。透明化させて、貴方の背後に配置しておいたの」
「くっ……キングビートルは囮か」

 キングビートルはヨハンのスキルで奪いコントロール下に置いた召喚獣。なので、ヨハンはまだ一体分の召喚権が残っていたのだ。

 闇の城に戻ってくる前。空に浮かぶクロスの姿を見たヨハンはあらかじめゴーストを召喚しておき、透明化を発動。いつでも入れ替われるように、クロスの後方に待機させていたのだ。

「馬鹿な……そんな馬鹿なああああ」

 矢の必中効果はまだ残っている。ヨハン目掛けて猛スピードで地上から戻ってきているものの。

 それでも、ヨハンの方が早い。

「貴方のその天使の輪を打ち砕く――ヘラクレスオオカブトの構え・宇宙そら……きゃっ!?」

 ヨハンはクロスの頭部目掛けてテラーズブラスターを放つ。だが足場の無い空中で撃つことに慣れていなかった為、手元が狂ってしまった……。

「そんな……この僕がああああああああああ!?」

放たれた閃光はクロスの胴体に命中。クロスのHPを全て奪い去る。そして、悔しそうな顔をしたクロスは、光の粒子となって消滅した。

「あ、あれ~?」

 クロス消滅と同時にヨハンを追っていたアウルヴァンディルの矢も消滅。しかし同時に、オウガVSクロスという世紀のライバル同士の対戦カードも消滅してしまったのだ。

「私、もしかしてやらかしました?」

ってしまったヨハンは、地上へ落下する間、必死にオウガへの言い訳を考えるのだった。

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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