お前のような初心者がいるか!

第83話 スキル七連コンボ

ヨハンとゼッカはキングビートルの背に乗り、ギルドホームを目指していた。

「持ちこたえてくれているといいんですが……」
「きっと大丈夫よ」
「ところでヨハンさん。さっき考えがあると言ってましたけど……何故わざわざこの子を奪ったんですか?」

 ゼッカはヨハンに訪ねた。確かにキングビートルは召喚獣としては破格の強さを持つ。性能はクロノドラゴンや他の上級召喚獣よりも上だ。

 だが貴重な一時間を使ってまで手に入れる価値があったかと言えば、ゼッカとしては疑問なのだ。別にクロノドラゴンでも十分なのでは? という気がしてしまう。

 ゼッカの疑問に対して、ヨハンは答える。

「それがね。さっきお祭りのルールを見ていて思ったんだけど……HPがゼロになった人は、待機エリアに移動して、戦いを見ることができるのよね?」

「ええ。ギルド同士で戦闘が起こった場合、それは待機エリアから観戦できるはずです。まぁ終わるまでの暇つぶし的な意味合いが強いですが」

「ゼッカちゃんはそう言うけど……私は暇つぶしだとは思わないの。これはかなり重要なことだと思う」

「どういうことですか?」

「戦いが観戦できる。つまり、待機エリアなら好きなだけ強プレイヤーの情報を得られるということよ」
「えっ……?」

「竜の雛じゃムリだけど。もしギルドの人数に余裕があったなら、私なら間違いなく味方を何人かワザと敗退させて、待機エリアでの情報収集に徹してもらうわね」

「大手ギルドもそれをやっていると?」

「やらない手はないでしょうね。どう考えても、大手ギルドのポイントの入りが悪いもの」

「なるほど、観戦からの情報漏洩を警戒しているんですね」

 戦いは三日間に分かれている。全てのギルドが全力でぶつかれば、もっと全体的にポイントが上がっていく筈。だがそれがないのは、どのギルドも力を小出しにしているからに他ないのでは? というのがヨハンの考えだ。

「だからヨハンさんは、わざわざキングビートルを?」

「ええ。この子なら今日が終わればもう使えないし。クロノドラゴンの情報は、できるだけ隠しておきたかったの」

クロノドラゴンの全スキルを解放しているのはヨハンだけだろうと言われている。クロノドラゴンのスキルの情報は竜の雛にとっての切り札なのだ。

「それにしてもこのキングビートル、なかなか安定して飛びませんね……」

ゼッカが不満を口にする。キングビートルは先ほどからグルグルと回ったり、無駄に動いたりと忙しない。

「ってか、私たちを振り落とそうとしているような……?」
「ふふ。もしかしたら元の召喚師のところに帰りたいのかもしれないわね。帰さないけど」
「まったく美女二人を乗せて何が不満なのか」

その時だった。二人の目にメッセージが飛んできた。

「え?」
「そんな……」

『煙条PのHPが0になりました』

***

***

***
竜の雛のギルドホーム【闇の城】上空。

ギルド【セカンドステージ】のギルドマスターであるクロスは、スキルによる飛翔能力で空を飛びながら、闇の城の庭で行われている戦闘を余裕の表情で眺めていた。

 その手には彼の身長すら超える巨大なユニーク弓【ゴッドレイジ】が握られている。そしてその弓を持つことによって与えられるスキル【ゴッドヘイロー】によって、クロスは飛翔能力を得ることができるのだ。

「あはは。まさかこの位置から狙撃できるとは思っていなかったようだねメイ」

クロスは地上にいるメイの奮闘を楽しそうに見つめていた。

セカンドステージのメンバーは全部で60人。その内、戦闘に特化したユニークを持つ30人を引き連れて、クロスは竜の雛を強襲した。

 最初こそメイの采配と強力な護衛召喚獣に苦戦していたメンバーたちだったが、徐々に召喚獣たちの守りを突破。メンバーたちは、どんどん中に入り込んでいる。2Fの戦闘にて煙条Pのバフを受けたドナルドに苦戦する仲間たちを見かねて、たった今、ここから煙条Pを倒したところだった。

「さて、先行部隊はどうなったかな……チッ。まだあのピエロに手こずっているのか……」

 クロスの前には、別の場所を映したウィンドウが出現している。スキル【視覚共有】によって、クロスが【初級召喚術】により召喚した召喚獣ゴーストの見た視界を表示しているのだ。そしてそのウィンドウには小学生プレイヤーたちの猛攻をやり過ごすドナルドが映し出されていた。

クロスは弓使い。何故【初級召喚術】が使えるのか? それはユニークスキル【強制徴収】により、手に入れたからである。

 ユニークスキル【強制徴収】。ギルドメンバーからスキルを一つ奪うことができるスキル。但し代償として、奪われた者はその間、あらゆるスキルを使用できないというデメリットがある。これを使用し【初級召喚術】を取得、クロスは弓使いでありながら【視覚共有】のスキルの入手にも成功したのだ。

続けて、メニューを操作し【弓矢作成】を起動。素材を消費し、一本の矢を生み出す。

【アウルヴァンディルの矢】。その制作レシピはユニークで、クロスにしか作れない究極の矢である。その効果は、敵にヒットした時、ダメージ計算前に相手の全ての強化状態を無効にし、発動を封じる効果を持つ。

 これにより相手がガッツを持っていても発動させずに勝つことができる。デメリットは、矢に一本しか持てない所持数制限がついているので、一発撃つ度に作成し直さなくてはならないことくらいか。

「ピエロねぇ、実に醜い。僕はお前のような図体のでかい大人が大嫌いなんだ……」

 矢を構える。そして、スキル【必中】をドナルドに発動。本来目視しなければ発動できない【必中】のスキルだが、【視覚共有】とのコンボにより、ゴーストを通して見た相手にも使用できるのだ。

「食らえ――ゴッドレイジ!!」

 巨大な弓から矢が放たれる。その矢は一度地上に向かって飛ぶと、軌道変更。扉を超えロビーを抜けると、2Fにて敵の侵入を防いでいたドナルドの胴体を貫いた。

「ふっ。ここでゴッドレイジの効果発動! お前は終わりだ」

 視覚共有によって表示されているウィンドウにて、ドナルドのHPが0になるのを確認し、笑みを浮かべるクロス。
 ユニーク弓ゴッドレイジは、【ゴッドヘイロー】によって飛行中に放った矢の与えるダメージを5倍にすることができるのだ。

「フッ。見たかオウガ。これが僕のスキル7連コンボ……【クロスセブン】だ」

【ゴッドヘイロー】飛翔によって敵の攻撃を防ぎ、【ゴッドレイジ】によるダメージを増加させる。

【強制徴収】によって得た【初級召喚術】で呼び出したゴーストで【視覚共有】、どこにいる相手も目視して【必中】。

どんな防御能力も【アウルヴァンディルの矢】の矢で無効。

決まればヨハンさえ一方的に倒す事が出来る最強コンボ。それがクロスのゴッドセブンである。

「くくく……オウガ。はやく城から出てこないと、お前の仲間が全員死ぬぞ……ふはは……ふははははは」

そしてクロスは再び眼下の戦いに視線を落とす。そしてアウルヴァンディルの矢が再び作成可能になるまでの数分を待つのだった。

no image
第84話 VS元パーティーメンバー

数日前。 オウガとゼッカは夜の短い時間を使って、GOOのランキングトッププレイヤーであるロランドに修行をつけてもらっていた。 ロランド自身の戦い方は【最果ての剣】のチャンネル動画でも確認できる。だが実 ...

続きを見る

スポンサーリンク

記事スライドショー

2023/8/9

【予定】今後の投稿予定

いよいよ8月……も半ば、明後日からお盆という時期に相成った。 前回の記事…というかコミックス3巻の発売からすでに一か月経っていると考えると時間の経過が恐ろしい。 コミックスを購入してくれた方はありがとう! この記事ではこの一か月間の間に挑戦したことと、お盆以降の予定について報告したい。 7月~8月 挑戦したこと 新作を投稿する カクヨム - 「書ける、読める、伝えられる」新しいWeb小説サイト陰に生きる最強忍者さん、ダンジョンで美少女配信者を助けてバズってしまい無事忍...https://kakuyomu ...

ReadMore

2023/7/12

【7月14日発売】お前のような初心者がいるか! コミカライズ3巻告知用ページ【告知】

各種Webサイト様で連載中のお前のような初心者がいるか!のコミックス3巻が7月14日発売ということで、お知らせです。 通販サイトなどでは予約が始まっているので、まだという方は是非! お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです 3 posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 可愛らしく書いていただいたゼッカが目印! 内容としましては書籍版準拠で海賊王レイド後半~ドナルド登場あたりまでとなっております。 どこも面白く漫画としてまとめていただいてますので、是 ...

ReadMore

2023/4/16

【告知】引っ越しと新作がちょっといい感じの話

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、その後すぐに執筆を開始。 普段は6万字~10万字のストックを作ってから投稿を開始するんだけど今回は3話分、6000文字程度で投稿を開始。 超見切り発車で完成度は微妙。さらにはストックがないから殆ど投稿5分前に書き上がったのをそのまま出荷みたいな自転車操業をしている。 ただその分、今まで考えていた「読者受け」と ...

ReadMore

no image

2023/4/12

【旧】第139話 追加メンバーたち

 メンバー募集当日の昼。集合時間の一時間前。  竜の雛のミーティングルームには、見慣れない顔が揃っていた。  対外的にメンバー募集を発表した竜の雛。希望者には軽い面接の後にギルドに加入してもらう予定だが、現メンバーの顔見知りには、特に面接もなく加入してもらうことになっている。そんな友人経由の希望者には、一般の集合時間よりも早めに集まってもらっていた。 「ヨハンさん。私の友達二人をご紹介します!」  改まってゼッカがヨハンの前に連れてきたのは二人の女子高生プレイヤーだ。  一人はヨハンもよく知る人物、元【最 ...

ReadMore

2023/4/2

【無料】小説版 お前のような初心者がいるか! が無料で読めるお話

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知らなかった。 昨日寝る前に偶然発見したのでこちらでもご報告しておきたいと思う。 Kindle unlimitedを30日間無料で利用する   無料読み放題って作者は大丈夫なの? 「無料で読み放題とか大丈夫なのか?」と思われるだろうが心配ない。 というのも無料でもダウンロードされれば電子書籍が一冊買われたのと変わ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

おすすめ記事はコチラ

1

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知ら ...

2

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、 ...

-お前のような初心者がいるか!