お前のような初心者がいるか!

第71話 誰に向かって言っている

三日目。

 この日は予定があったので、夜にログインした。そして、ギルドホームでゲッソリした顔のコンと出くわしたので、一連のクエストの事を話してみる。

 するとコンは息を吹き返したように、ヨハンにクエストの事を根掘り葉掘り聞いてきた。どうやらコンでも知らないクエストのようだった。

「コンちゃんでも知らないことがあるのね」

と何気なく言うと、コンは少し引き攣った顔をした。

コンが把握している限り、現在のGOOでの職業【召喚師】のアクティブユーザーは10人程度らしい。とんでもない少なさだ。

そんな10人しか居ないような職業の専用クエストが発見される確率は限りなく低い。つまり、最近実装されたクエストを探すのは困難に近いのだ。

「報酬は新しいスキルか召喚石か。召喚獣の研究者が絡んではるのも興味深いわ。やっぱりうちも参加しよ」

 という訳でクエスト発生条件を『アスカシティで召喚獣の連れ歩き』と仮定して、ヨハン、コン、レンマ、メイの4人で夜のアスカシティを散策する。すると、一昨日と同じようにあの少女の悲鳴が聞こえた。

「行ってくる!」
「行ってきますヨハンさん!」

 ヨハンとレンマは手を振りながら二人を見送った。どうやらコンの見立ては正しかったらしく、ちゃんとクエストが発生したようだ。

「……ボクたちはボクたちで、クエストを先に進めよう」
「そうね」

という訳で、ヨハンたちは少女の家に向かった。

***

***

***

 少女の家に行くと、しっかり少女が待っていたことに乾いた笑いを漏らしながら、二人は彼女の後に続く。先日のような地下水道だ。

「もっ……もっ……!」
「泳ぎたいの? ダメよ汚いから」
「もきゅぅ……」

 今日の連れ歩きはヒナドラ。鎧を脱ぎ私服姿のヨハンの頭上に乗ったヒナドラは、横を流れる人工の用水路に飛び込みたそうな顔をしていた。それを諫めると、ふてくされたように頬を膨らませた。

「そろそろですよ……みなさん」

 ヨハンが膨らんだヒナドラの頬を指で押して遊んでいると、開けた場所に出た。昨日のような場所とは違い、どこか遺跡のような場所で、奥は壁になっており、楔のような文字がびっちりと書き込まれている。

 何より目を引いたのが、壁に赤い塗料で書かれた巨大な魔法陣。

「お父さん!」

 少女が叫ぶ。見ると、その魔法陣の下には襲ってきた3人の男の内、残りの二人が立っていた。そしてその足下に、学者風の男性が横たわっている。

「安心しろ死んじゃいねーよ」
「この博士には、この儀式を完成させて貰わなくちゃならねーからな」

「儀式?」

 ヨハンが聞き返す。すると、男が答える。

「ああそうさ。ここは古代の神殿でな。ここでなら【神の召喚獣】を呼び出せるっつー話だ」
「神の召喚獣……神が召喚獣化しているのか、神が扱う召喚獣なのか、どっちなの!?」
「……多分めっちゃ強い召喚獣ってことだと思うよお姉ちゃん」
「神の召喚獣……お父さんが研究していた伝説の……」

「そうさ。博士には神の召喚獣を呼び出すために来てもらった」
「邪魔はさせねぇぜ?」

 男の一人が前に出る。その男の腕には、先日の男と同じように、赤黒い文様が浮かび上がっている。

「悪いがお前等にはここで消えて貰う――召喚獣召喚! ダークスパイダー!!」

 幾何学的な魔法陣から、先日も戦った丸い不気味な蜘蛛のモンスターが姿を現す。ダークスパイダー自体に戦闘力はないものの、【狂気卵舞(きょうきらんぶ)】という厄介なスキルを持っている。

「……昨日と同じモンスターか。これならまたメタルブラックドラゴンで楽勝だね」
「待って」

 ヨハンが言うと当時に、男が何か呪文を唱えている。それは日本語ではなく、何か呪詛のような不気味な響きを持つ言葉だった。

「これ妨害できないかしら?」
「……いや、ストーリー系のクエストの会話パートだし、無理だよ」

やがて男の体が黒い霞となって、ダークスパイダーを包み込む。そして。

「見たか! これこそが古代のスキル……召喚獣との合体、デスコンバートだ!」

 そう勝ち誇った男は確かにダークスパイダーと合体していた。ダークスパイダーの額の部分から、男の上半身が生えている。神話に登場するアラクネーに似ている。


※イメージ図

「……なんだか悍ましい見た目だね、お姉ちゃん」
「ええ、ちょっと羨ましいわね」
「……お姉ちゃん?」
「おぞましいわ。ああおぞましいおぞましい。早く倒さないと。ヒナドラ!」
「もっきゅ!」

 ヨハンの頭上に居たヒナドラがぴょいんと前に出る。速攻を仕掛け、敵のスキルが発動する前に倒しきるようだ。

「ヒナドラ……進化よ!」
「もっきゅー!!」

ヒナドラは進化召喚を発動。その姿を漆黒の鎧竜クロノドラゴンへと進化させる。

「……クロノドラゴン? でもタイムメイカーを今使っても……」
「ふふ、甘いわねレンマちゃん。あの襲撃イベントで得た素材とお金で、クロノドラゴンの残り二つのスキルも解放したのよ……」

すると、ヨハンは興奮した様子でビシッと敵を指さす。

「クロノドラゴン――ジオサイドフォース!!」

クロノドラゴンの口にエネルギーが溜め込まれる。必殺技スキル発動の準備に入ったのだ。

「甘いぜ。はああああ!」

 だが、そのチャージの時間に、ダークスパイダーの口が開き、そこから召喚石が吐き出される。その召喚石は即座に起動。様々な昆虫を組み合わせたような見た目をした召喚獣【ベビー】が10体ほど誕生した。そして、その内の一体が【デコイ】のスキルを発動させる。

「デコイ!?」

 敵の攻撃を自分に引き付けるスキル【デコイ】をベビーが発動したことによって、クロノドラゴンの攻撃対象がダークスパイダーからベビーに変更される。

 クロノドラゴンの口から放たれた白紫色のエネルギー波はデコイ発動中のベビーに命中。周辺のベビー数体も巻き込んで倒したものの、ダークスパイダーには傷一つ付けられないかった。

「ベビー、もしかして元の召喚獣が持っていたスキルを使えるのかしら?」

 姿こそ変わっているが、ベビーは元々違う召喚獣だったはずだ。見た目が変わっても、元のスキルを使えるのだとしたら……非常に厄介だ。

「……でも、だったら何故、昨日は使わなかったんだろう?」
「ふっふっふ。それは俺が直々に教えてやるぜ」

 男が語る。元々ダークスパイダーの【狂気卵舞】には、ベビーに元になった召喚獣のスキルを使わせる能力が備わっていたのだ。だが、それを指示するのは召喚師ではなくダークスパイダー本体。なので、扱いきれなかったのだろう。

「しかしその弱点は俺が召喚獣と合体し、思考を融合させたことで克服した! これこそ召喚術の最終進化形態! これからは召喚師(サモナー)も戦う時代だぜ」

「あら、誰に向かって言っているのかしら?」

 敵の言葉を受けて、ヨハンは不敵に笑う。そしてメニューを操作すると、装備を服から漆黒の鎧【カオスアポカリプス】へと切り替えた。

「お、お姉ちゃん……アイツはああ言っていたけど、このクエスト中、召喚師は戦いに参加できないよ?」
「ええそうね。でも、サポートはできるでしょ?」

そう言うと、ヨハンはクロノドラゴンを強化すべく、スキルの準備を開始した。

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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