お前のような初心者がいるか!

第53話 もうこれで終わってもいい

イベント最終日の午前11時。竜の雛がホームとする暗黒の城でも、定期襲撃が行われていた。
 庭の防衛を担当していたゼッカは、敵味方併せて2000体以上が犇めく庭の中で戦っていた。もう一人、煙条Pも居たのだが、早々に敵の集中攻撃に遭い落ちてしまった。これで今回の防衛には参加できない。
 一人残されたゼッカは黙々と剣を振った。もはや目に映るモンスターが敵か味方なのかもわからない。既にベリアルカーサンは城の中へと侵攻している。ゼッカに出来るのは、後を仲間に任せて、少しでも多くの敵を倒し、モンスターが中へとなだれ込むのを防ぐことだ。

「ん……そろそろ、限界……」

健闘したが、流石に敵の数が多すぎた。ポーションで回復する時間もない。ゼッカのHPが尽きようとした、その時だった。

「何!?」

 突如空が輝く。天空に巨大な門が現れ、ゆっくりと開く。そして、地上の敵を吸い込んでいく。

「あれは……天使?」

 その門を開いたと思われるプレイヤーは、ゆっくりと後光を受けながら舞い降りてくる。それはここには本来居ないはずの……。

「悪魔……じゃなかったヨハンさん!?」

 最終日夜から参加予定だったヨハンが降臨……もとい、ログインした。

***

***

***

 前日金曜日。軽く残業を終わらせた哀川圭は自宅に帰ったものの、一週間の疲れが溜まっていたせいかそのまま寝てしまい、次の日も寝坊した。
 そしてヨハンとしてログインし、急いでギルドホームに来て見れば、ゼッカが孤軍奮闘しているではないか。乗っていたメテオバードから飛び降り、敵に【ゲート・オブ・ヘブンズ】を発動したのだ。

「ヨハンさん。今日は夜からの筈じゃ」
「予定が変わってね。今日は一日中遊べるのよ」
「本当ですか!? やった!」
「で、私は何をすればいいのかしら?」
「とりあえず、ここの敵を全滅させます」
「なるほど、簡単ね」

 今のゲート・オブ・ヘブンズで敵の数は150程減って、味方の召喚獣達を除けば、敵のおおよその数は1500体と言ったところか。

「行けますか?」

 ポーションを使いながら、ゼッカが訪ねる。

「そうねぇ。まずは……【パワーエール】!」

 ヨハンは中級召喚獣バックアップチアのスキル【パワーエール】を十回ゼッカに使用する。
これによりゼッカの筋力値に1000+される。

「ありがとうございます! これなら敵が豆腐みたいに切れますよ!」
「良かったわ。それじゃあ、私はちょっと準備があるから、それまで敵をこっちに近づけさせないようにしてもらってもいい?」
「任せてください! うぉおおおお」

 やる気全開のゼッカが敵陣に駆けだしていく。それを見送りつつ、ヨハンはメテオバードの召喚を解除し、新たにプレレフアを召喚する。そしてプレレフアに【フラワー・オブ・ライフ】を使って貰い、自分でも【フラワー・オブ・ライフ】を使用。さらに【増殖】を使用し、二体の分身を生み出した。

「これだけじゃ、いつもと同じ……それじゃあこの敵を一度に倒すのは不可能だわ」

別に一度に倒す必要はない。

「けれど増殖した私は、私が操作できる。私の使えるスキルも全て使える。ということは……増殖」

 ヨハンは増殖した自分に、さらに増殖を使えと命じる。すると、増殖したヨハンからそれぞれ新しく二体のヨハンが誕生する。さらに増殖。続けて増殖。

「うっ……なんか頭痛が……これが限界みたいね」

 増殖に増殖を重ね、30体のヨハンを生み出したところで、本体のヨハンは軽い頭痛に襲われた。同時操作の限界が訪れたようだった。

「本当は48体揃えたかったけど、無理ぽいわね。残念。それじゃ、みんなで一斉に! 【フラワー・オブ・ライフ】」
「「「「フラワーオブライフ」」」」
「続けて【闘魂・極】」
「「「「闘魂・極」」」

 30体の分身ともなると、流石に個別に操作するのは不可能に近い。なのでヨハンは30体の分身を、城を背に一列に並べると、それぞれに強化スキルを使用させた。

「それじゃあ一斉に行くわよ……」

そして、本体と30体の分身達は、全員が同じポーズを取る。

「ヘラクレスオオカブトの構え・波!!」

 計31人のヨハンから、バスタービートルのスキル【テラーズブラスター】が一斉に放たれる。敵は攻撃に気づくが、避けられない。どこに避けようと、逃げ場など無いのだから。

「え……大勢のヨハンさんが変なポーズを……ぐぇ!?」

 前線で戦っていたゼッカもまた、ダメージこそ無いが、その光に飲まれる。そして、庭に居た全ての敵を殲滅することに成功した。

「ふふふ。なんとかなったわね」

 ハイタッチしながら消えていく分身達を見送りながら、ヨハンは倒れたゼッカの方へと歩いて行く。

「ごめんなさいねゼッカちゃん。巻き添えにしてしまって」
「それはいいですが……あの、さっきのポーズは一体?」
「ああ、アレはヘラクレスオオカブトの構えといってね……」
「へぇ、なんか変なポーズですね!」
「凄く格好良い……え、変? 変なの?」
「はい。でも、ヨハンさんがやっているからには、何か凄い秘密があるんですよね? 古武術ですか? それとも……あれ、ヨハンさん? どこへ!?」
「ぐすっ……なんでもないわ」

ヨハンはもうあんなポーズしない! と誓いながら、城の中へと向かっていった。

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第54話 黒き暴虐

「――【ダブルスラッシュ】!!」「――【ブラックフレイム】!!」  庭に湧いていた敵を殲滅したヨハンとゼッカは城の中に戻り、ロビーに居た敵へ攻撃を始めた。とは言っても殆どは上の階層へと侵攻しており、そ ...

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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