お前のような初心者がいるか!

第17話 ヨハンの秘密と新スキル

「……そういえばお姉ちゃん、MPはどうしてるの?」

 敵の第一陣が止み、攻撃が収まっている時間帯。イヌコロにサイリウムを集めさせているヨハンにレンマが疑問を投げかけた。

「……MPポーションとか、使ってないよね? ……もしかしてMP極振り?」
「きょくふり?」

 ヨハンは首を傾げた。レンマの質問の意味がわからなかったからだ。ちなみにヨハンはレベルアップで得たポイントを一回もステータスに振り分けていなかった。その事実に皆が驚愕するのは、かなり後になってのことである。

「……召喚獣、召喚するとMPを使う。何度も召喚するなら、MP回復は必須」
「ああ、そういうことね。それなら」

 ヨハンはストレージから召喚石を一つ取り出す。それはかつてゼッカから貰った召喚師スターターキットの最後の一体【リトルウィザード】。
 攻撃を司るこの召喚獣のスキルは三つ。 無属性魔法攻撃を行う【初級魔道弾】。さらに魔道弾を三連発する【初級連続魔道弾】。どちらも直接使えば使いやすいスキルだが、ヨハンが【ブラックフレイム】の方を積極的に使うため、今まで日の目を見ることはなかった。

 そしてヨハンが見せたいのは三つ目のスキル【マナ加速】。10秒ごとにMPを5回復するスキルだ。

「……なるほど。でもそれだけじゃ足りないよね?」
「え、足りるけど……」
「……え?」
「え?」

 会話がかみ合わない。

「……だってお姉ちゃん、召喚獣の強力な攻撃スキル連発してるよね?」
「ああ、なるほどね。ようやくレンマちゃんの聞きたいことが理解できたわ。つまりこういうことよね? 召喚獣のスキルを連発しているけど、その分のMPはどこから確保してるのか?」

 レンマはコクリと頷く。

「結論から言うと、【暗黒の遺伝子】で召喚獣のスキルを発動するとき、私のMPは減らないのよ」
「……は?」

 驚くのも無理はない。

「……いや、待って待ってお姉ちゃん。さすがにそんなことはありえないよ」
「それがあり得るのよ。【暗黒の遺伝子】の効果は召喚獣のスキルを自分が使えるようになるスキルじゃないの」
「……え?」

「召喚獣のスキルを『発動することができる』なのよ。つまり、召喚獣のスキルを発動させるまでが【暗黒の遺伝子】の効果。みんながMPを使って発動させているスキルを、私はスキルを使って発動させているの。だからMPの消費はないのよ」

「……な、なるほど。滅茶苦茶だけど、納得した。……スキルが使えるようになるスキルじゃなくて、スキルを発動させることができるスキルってことだね」

「そういうこと。日本語って難しいわね」
「……ボクも言ってて訳がわからなくなってきた」

 ヨハンのデタラメな強さの一端に触れたレンマ。そして得意げに語っているヨハンであるが、全てゼッカが考察したことの受け売りである。ゼッカが疑問を持たなければ、MPの消費なんて初心者のヨハンは全く気にも留めなかっただろう。

「それとねレンマちゃん。MPの心配も、もう無くなったのよ?」
「……え?」

 ヨハンがMPを使うのは実質、召喚獣を召喚する時だけだ。召喚獣に戦わせておけば、後はリトルウィザードの【マナ加速】で勝手にMPは回復していく。それで十分では? と思うレンマだったが、ヨハンはその想像の先を行っていた。

「メテオバードを覚えてる?」
「……うん。……あの隕石みたいな火の鳥」
「そう。あの子がね、新しいスキルを覚えたの。【羽休め】って言うんだけど」

メテオバードの第二スキル【羽休め】
・10秒間地上に降りることで、HPとMPを最大値の50%回復する。

「……飛行系の召喚獣が地上に降りるのはかなりのリスクだけど……あれ、これお姉ちゃんが使うとどうなるの?」
「永続スキルじゃないから、常に発動しているわけじゃないけど、使えば普通に地面に立ってるだけで回復できるわ」
「……デメリットがデメリットになってない……」

まさにローリスクハイリターン。

「回復の10秒をガッツ後の無敵と組み合わせれば、強力よね!」
「……ボク、ランキングとか興味ないけど。お姉ちゃんと戦わなきゃいけない人が素直に気の毒だよ」

 等とレンマが呟いた時だった。アイドルの歌う曲が変わり、高難易度クエストの開始が宣言された。

「来たわねビッグホエール。私が相手よ!」

 ヨハンはメテオバードを召喚。それを空高く飛翔させると、解放したばかりの第三スキル【メテオレイン】を発動。上空から火球を五連弾放つ技だ。それによりビッグホエールの背中のクリスタルを破壊。二体目のメテオバードと共に上空へと飛翔すると、【増殖】によって分裂。そして三人のヨハンが【ファイナル・メテオ・インパクト】を放ち、KOした。

 レンマはその様子を呆然と見上げていた。

「これなんのゲームだっけ?」と言ったとか、言わなかったとか。

***

 空母ビッグホエール撃破後。
 ヨハンは『新しいスキルを習得しました』というメッセージを受け取った。

「久々ね。どんなスキルなのかしら」
「……もしかして、ユニークスキルかな!」
「う~ん、残念ながら違うみたいだけど……でも結構強いスキルよ?」

【闘魂・極】
武器を装備していない時に発動可能。3分間、筋力と魔力の数値が倍になる。

《入手条件》
武器を使わずに1000体のモンスターを討伐。

 ヨハンは防具のカオスアポカリプスによって、頭、胴、右手左手、足の全ての装備スロットが埋まっている。なので、現状のまま筋力と魔力を倍にすることができるようになったというわけだ。単純に火力が二倍。恐ろしい話である。

「……偶に素手で戦っている人を見るけど、このスキルで戦ってたんだ。なるほどね」

 と頷くレンマ。ちなみにレンマの着ているゴリラの着ぐるみ、通称【ゴリラアーマー】も防御力に特化した全身防具であるため、【闘魂・極】の発動条件を満たしている。だが単純にモンスターの討伐数が少ないため、まだ覚えられていないのだろう。やがてこのスキルをマスターすれば、守備と攻撃を切り替えるスイッチゴリラとしての活躍が見込めるはずである。

「さて、ゼッカちゃんにいい土産話もできたし、そろそろ戻りましょうか」
「……うん。貴方が、望むならキリッ」
「もうやめてー」
「……うふふ、お姉ちゃん、面白い」

(ちょっとはレンマちゃんと打ち解けられたかしら? 誘ってみて良かったわ……それに、楽しかった)

 楽しかった今日の戦いを振り返りながら、二人はイベントエリアから撤収した。

 こうしてアイドルスターズコラボイベントは幕を閉じた。ユニーク装備こそ手に入らなかったが、ゼッカ、レンマという友人を得たヨハンは、VRMMOの魅力を、また一つ知ったのだった。

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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