お前のような初心者がいるか!

第14話 新しい仲間とアイドルイベント

 次の土曜日。第二層、城塞都市のとある広場。

「ゼッカちゃんはまだみたいね」

 久々にログインしたヨハンは人気の無い広場にやってきていた。中央広場は大勢の人で賑わっているが、こちらには店が無いためか、人が居なかった。

「今のうちにイベントの概要を確認しておきましょう」

コラボイベント第4弾 【アイドルスターズ】

【概要】
有名アイドルがGOOでライブ!? 武闘派プロデューサーとなって迷惑なモンスターファン共からアイドルのライブを守ろう!

・開催期間は二週間
・毎日一枚配布されるイベントチケットを使用すると、特別なエリアに行くことができる。(パーティ単位で転送。他パーティと同じエリアにはならない)
・ライブ会場を目指して侵攻してくる敵モンスターを倒して、専用ドロップアイテム【サイリウム】を手に入れよう。
・【サイリウム】はイベント限定アイテムや、通常素材と交換可能。また、イベント終了後にサイリウムは消滅するので注意。

「なるほど、集めたサイリウムを、各々で好きなアイテムと交換できる。イベント限定アイテムは、アイドルスターズのアイドルと同じ衣装なのね。可愛いけど……あはは、自分が着るのは無理ね」

 ヨハンは自分の年齢を考えて自重する。

「あと10若ければねぇ……この歳じゃねぇ」

 そのまま交換アイテムのリストを見ていると、ヨハンが欲している【召喚獣解放石】や【ビートルダイヤ】や【甲虫の角】も並んでいる。

「他のモンスターに必要な素材もリストアップしておいたほうが良さそうね」

 そうしてヨハンが必用な素材とそれにかかる【サイリウム】の数を計算していると、ゼッカがやってきた。

「遅くなってすみません~」
「いいのよ。それより、ここ人が居なくていい場所ね。落ち着くわ」
「はい、私のお気に入りなんです!」

 笑顔で笑うゼッカを見て、相変わらずこのゲームを全力で楽しんでいるなぁと感心するヨハン。

「ヨハンさん、イベントチケットはありますか?」
「ええ、バッチリよ」

 ログインボーナスから金色のイベントチケットを取り出すヨハン。後はこれをちぎればイベントエリアへと転送される。ヨハンは装備をカオスアポカリプスへと切り替える。

「よし、パーティ組めましたので、そろそろ出発しましょうか……ん?」
「……あの」ゴニョゴニョ

 二人で出発しようかと思った刹那、異質な姿をしたプレイヤーが近づいてきた。

 2メートルサイズの白い着ぐるみ。まるでゆるキャラのようなそれは、ゴリラか雪男を思わせる見た目をしている。かすかに聞こえる声から、相手が女の子だということがわかるが、それ以外が全くわからない、謎に包まれたプレイヤーだった。

「貴方は?」

 少々警戒したように強めの口調でゼッカが言った。

「……うぅ」
「あのね、何か言ってくれないとわからないんだけど?」
「……」シュン

 着ぐるみなのに、ゴリラの顔が困り顔になる。ヨハンはやっぱゲームって凄いわと感心しつつ、着ぐるみゴリラに近づいた。

「ちょっとヨハンさん、危険ですよ。攻撃してくるかも」
「そんなことしないわよね?」

 そう尋ねると、着ぐるみゴリラはコクリと頷いた。

「怖がらなくていいわよ。あのお姉ちゃんはね、いきなり話しかけられてびっくりしているだけなの。ゆっくりでいいから、話してちょうだい?」
「いや、どう考えてもヨハンさんのほうが怖いと思うんですが……ラスボスの見た目だし」

 そんなゼッカを他所に、着ぐるみゴリラは再び頷くと、ゆっくりと話し始めた。

「……あの。ボク、職業【守護者(ガーディアン)】……なの。だからね……えっと」
「素材を沢山集めるイベントは一人じゃ厳しいわよね」
「……うん。それでね。その……お姉さんたちに手伝ってほしいなって」
「パーティに入りたいってこと?」
「……うん。アイドルの衣装、着たいんだ」
「よく言えたわね。いいわ、仲間に入れてあげる」

 ヨハンはそう言うと、ゼッカを振り返る。

「ヨハンさんがそう言うならいいですけど。でもね君……えっと名前は……【レンマ】さん? ただ寄生するつもりならお断りしたいんだけど?」
「……あの……これ」

 着ぐるみゴリラ改め、レンマは二つのアイテムを取り出した。アイドルの名前が刻まれたハチマキだった。

「ん? なぁに、コレ?」
「ヨハンさん、これイベント限定アイテム【プロデューサーのハチマキ】ですよ。これを装飾品欄に装備しておくと、【サイリウム】のドロップ数がアップするんです。上位の生産職しか作れないはずなのに……これを私たちに?」
「うん……手伝ってくれるなら……あげる」
「嬉しい。私もサイリウムが沢山欲しかったし、助かるわ」
「私も異論はありません。レンマさん、寄生なんて言って申し訳ありませんでした。今パーティメンバーに追加しますね」
「……ありがとう」

 奇妙な少女レンマも迎え、ヨハンたちはイベントエリアへと旅立った。

***

 イベントエリアに転送されるヨハン、ゼッカ、レンマの三人。

 古代ローマの劇場のようなフィールドで、ステージの上ではコラボ元のキャラクターなのだろうアイドルの女の子が踊っている。そして客席の向こう側から、ジリジリとステージに向かって歩いてくる敵モンスター。その姿は第一層で見たことのあるゴブリンだったが、ハチマキや法被、団扇などを所持しており、このイベント限定の敵なのだとわかる。

「曲もアイドルスターズのみたいですね。テンション上がります」
「……可愛い」

「へ、へぇそうなんだ」(下調べしてくればよかったわ)

 ヨハンは知らなかったが、他の二人は聞き覚えがあるようだ。

「とにかく、アイドルのライブを守り切る……って設定みたいですね」
「そういうストーリーみたいなのがあると燃えるわね」

 ゼッカは一歩前に出ると、二本の剣を抜いた。

「ヨハンさん。ちょっとそこで見ててください。私の戦いを」
「ええ、いいわよ」

 ゼッカには、自分だけ一方的にヨハンの戦い方や能力を知っているということに負い目を感じている。なので、このタイミングでヨハンに自分の戦い方を知ってもらおうと思ったのだ。

「いざ!」

 ゼッカは剣士の中でもより攻撃力の高い二刀流をメインに戦うプレイヤーである。
 ゼッカが両手に持つ二本の剣は、右手が黒、左手が白い色をしている。ゼッカは物凄い速さで敵に近づくと、一振りで5匹のゴブリンを真っ二つに切り裂いた。そして、そこから少し離れた位置に居たゴブリンたちにも斬撃を飛ばし、撃破する。瞬く間に敵の第一陣を全滅させた。

「凄いわね……」
「見ましたか! これが私のユニーク装備【デッドオアアライブ】です!」

 ゼッカは自慢げに白と黒の剣を掲げてみせた。おそらく何か能力を使っていたのだろうが、ヨハンにはわからなかった。

「……ユニーク装備いいなぁ……うらやましい」
「レンマちゃんの装備は別の意味でユニークよ」

 その後も侵攻を続けてくるゴブリンを倒し続けるゼッカ。イベントの敵のCGモデルは使い回しだが、その戦闘力は比較的上昇している。にもかかわらず、ゼッカに掛かればまるで元のゴブリンと同じように倒せてしまう。さすがはレベル50と言ったところか。そして数え切れないほどの敵を倒した結果、床には大量の【サイリウム】が転がっている。

「召喚獣召喚――【イヌコロ】!」
「わんわんわん」
「よしよしイヌコロ。あのお姉ちゃんの周りに落ちてるサイリウムを集めてきて頂戴」
「わんわんわん」

 イヌコロを呼び出し、サイリウムの回収に向かわせる。

「……いいの?」
「え、何が?」
「……召喚獣……お姉ちゃん戦えないよ?」

 言葉は足りないが、どうやらレンマはヨハンのことを心配しているようだった。召喚獣が居なければ戦えない、それが召喚師だからだ。

「うあああミスったあああ! ヨハンさん、そっちに敵が行っちゃいましたあ」

 その時、前衛で頑張っていたゼッカの攻撃をすり抜けた敵が、ステージに迫ってきていた。法被を着たコボルトが、オタ芸モーションをしながら近寄ってくる。

「……ここはボクが」
「いいえ、大丈夫よ。私に任せて」
「……え、どうやって?」

 レンマにそう言うと、ヨハンは前に出る。

「うふふ、ここは通さないわよ……ブラックフレイム!!」

 ヨハンは侵攻してきたコボルトを焼き払う。黒い炎に包まれた敵は一撃で消滅。その場には数個のサイリウムが残った。

「……え、えぇぇええ!? なんで? ……召喚師なのに……どうなってるの?」
「ふふ、私もユニーク装備なの。さ、こっちのサイリウムは、私たちで拾いましょう」

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第15話 初のパーティー戦とその後

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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