お前のような初心者がいるか!

第106話 何故お前が

「はぁはぁ……ようやくたどり着いたわ」

「あーはいはい、おこしやす~」

 城の入り口で待ち構えていたコンは、氷の迷路を抜けてやってきたギルティアをにこやかに歓迎する。まるで招いていた友人を家に上げるときのような気軽さに、ギルティアは拍子抜けした。

「あれ、アタシが一番目?」

「そうどす。あんたがナンバーワンや」

「ナンバーワン。悪くない響きだわ。さて……」

ギルティアは担いでいたオメガソードを構える。

「アタシたちも、決着をつけましょう!」

「あー戦わなくてもええんよ。ギルはんは先に行って」

扉を開け、執事のまねごとのようにお辞儀をするコン。これは竜の雛の作戦だった。

ギルティアが迷路を最初に突破できるよう、彼女の元には一切召喚獣を送らず、素通りさせていたのだ。

そして先に迷路を突破させ、先の階層へ送り込み、ゼッカと直接対決させるのだ。

城入り口にて、ギルティアは先に行かせ、後からきたメンバーは全力で足止めし時間を稼ぐ。それがコンの役割だったのだ。

「あらどうしたん? ぷるぷる震えて」

「先に行っていいって……アンタまでアタシを居ないモノみたいに扱って……」

「あらウチなんか地雷踏んだ?」

今日一日、ギルドメンバーたちから軽く扱われてきた鬱憤が、よりにもよってここで限界を迎えた。

 コンの「先にいっていいよ」という言葉を素直にも受け取らず、さりとて罠とも受け取らず、ただ自分を軽く扱われたと受け取ってしまったのだ。

「この鬱憤をアンタにぶつけるわ! 覚悟しなさい狐女!」

「う~んもう。めんどくさい子やね……まぁええわ。管狐」

「クゥ~ン」

コンは連れ歩き状態だった管狐を召喚状態に切り替える。

「新しいスキル――多重影分身」

「クゥ~ン」

 トランスコードによって解放された、管狐の新しいスキルが発動すると、管狐の姿が9体に増えた。それを見たギルティアは、何かを思い出したのか、青ざめた顔をした。

「管狐が9体……まさか……噂のアレがくるのね」

「久々のお披露目や。現れ出でよ! ユニーク召喚獣――九尾の狐!」

 氷雪に包まれた大地を燃え上がる炎が包み込む。そして、地獄からあふれ出た霊魂が周囲を飛び回る演出が挟まり、やがてそれらが集まって、怪物が姿を現した。

九本の尾を持つ怪物が。

***

***

***

「ムッ……!?」

「ど、どうしたんすか、ロランドさん」

場所は変わって、氷の迷路の中。

足止め&時間稼ぎ役としてロランド、ガルドモールの二人と相対し、いまこそ戦いの時! という状況で、ロランドが空を見上げて立ち止まった。

「私のお兄ちゃんセンサーに、何か反応が……」
「いや、本当にどうしてしまったロランド殿~?」

「妹がピンチの時、私のお兄ちゃんセンサーがアラートを鳴らすのです。ああ、どこかで妹にピンチが迫っている……すまないオウガくん。師弟対決はまた今度ということで……」

 ロランドは「じゃ!」と片手でジェスチャーすると、壁に向かって走り始める。そのままぶつかるかと思いきや、でこぼこを上手く利用し、壁の縁まで駆け上がっていった。そして、センサーとやらで妹の場所を感知したのか、そのまま妹の名前を叫びながら走り去っていった。

「ろ、ロランドどの~危ないですぞ~」
「人間業じゃねーな」

しばし呆気にとられる二人。だがすぐに緊張感を取り戻す。

「ロランドさんは思わず見逃しちまったが、アンタには同じ真似させないっすよ」

「ははは、心配無用ですぞ。あんな真似、誰にもできませんぞ~」

そう笑って、ガルドモールは剣を構える。

「ああ良かった。アンタ一人なら、多少は足止めできそうだぜ」

「ほほう。舐められたものですぞ~。レベルも体格も、大きな差があるのに、それを理解できていないのですかな~? これは少し教えてあげなくてはいけませんぞ~」

「はっ……行くぜ」

オウガとて、目の前のプレイヤーに勝てないことはわかっている。

 オウガの現在のレベルは41。対してガルドモールのレベルは50。ヨハンを見ていると感覚が狂ってしまうが、ゲームにおいて、レベルの壁はとてつもなく大きい。

加えてガルドモールはGOOでもトップクラスのプレイヤーだ。

今のオウガが一対一で勝てる相手ではないだろう。

(けど、俺にだって足止めくらいはできるはず……やってやるぜ!)

先に仕掛けたのはオウガだった。スキル【スラッシュ】で斬戟を飛ばし、敵の出方を見る。

だが。

「避けない!?」

 相手は避けない。盾でガードすることすらせず、仁王立ちで斬戟を受け止めた。オウガの攻撃は、その巨木のような体とそれを覆う鎧によって阻まれた。

「何故避ける必要が? 今受けたのはたったの1ダメージですぞ。おお、困った困った。あと619回攻撃を食らった、負けてしまいますぞ~」

(落ち着け。あのうざったい喋り方も台詞も、全部俺の調子を狂わせるための作戦だ。勝つ必要はない……足止めできればそれでいいんだ)

「ほう、仕掛けてこないのですかな~? 私とて早くロランド殿に追いつきたいんですぞ~」

言いながら、ガルドモールが剣を構える。

「一撃で倒しますぞ~――ファイナルセイバー!!」

 剣士系最強攻撃スキル【ファイナルセイバー】が放たれる。黄金のビーム状の攻撃は、オウガが今まで何度も見てきた攻撃だ。敵の初動の段階で回避体勢に入って、スキル発動と同時に回避する。そして、スキル発動後の隙を狙うのだ。

「ファイナルセイ……なに!?」

 敵の攻撃を避け、右サイドから攻撃を仕掛けようとしたオウガだったが、ガルドモールが左手に持つ盾が、オウガの方を向いていた。

「――ファイナルイージス!!」
「ぐっ!?」

盾から放たれる黄金のビーム攻撃。避けきれず、直撃してしまうオウガ。

「さて、先を急ぎますかな。……おや? まだ生きていましたか~」

「ぐ……まだ負けてない」

オウガはHP1で立ち上がった。ヨハンに手渡されていたイヌコロのスキル【ガッツ】によってなんとか耐えられたのだ。

だが二度目はない。

「しぶといですぞ~。いい加減苛ついてきましたぞ~」

「は……足止めって言ったっすよね? そう簡単にやられる訳ないでしょ」

それは強がりだった。大きな鎧を装備しているものの、ステータス配分はおそらくロランドと同じ。

 本気を出せばオウガより早いだろう。つまり、敵の攻撃を躱し続けて時間を稼ぐ方法も難しい。かといって、攻撃をたたき込んでも、ダメージを与えられない以上、相手の反撃を受け死亡する可能性が高くなる。

「はぁ……大して時間を稼げなかった。……けど、せめてあと一撃」

「違うな。その考えは間違っているぞオウガ!!」

「なっ!?」

聞き慣れた声が、上空から聞こえた。そして。

「――【神の裁き・ジャッジメントアロー】!!」
「ぐあああああああああ!?」

空から落雷のような攻撃が降り注ぎ、ガルドモールを襲う。

「そんな……何故お前がここに?」

オウガが見上げた先には……セカンドステージのギルドマスター、クロスが居た。

「昨日僕を倒したときの気迫はどこへ消えたオウガ。時間稼ぎ? 違うね」

そして、オウガの視界にメッセージが表示される。

『【クロス】からパーティ参加の申請がありました。参加しますか?』

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瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

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