【旧】お前のような初心者がいるか!

【旧】122話 ヒナドラ死す!? 脅威の沼地フィールド

2022年12月8日

 次の土曜日。

 おおよその予定を午前中の間に消化したヨハンは、昼食の後にGOOにログインした。

 コンやドナルドたちの話を聞いてみても、やはり今のところ、アマテラスシティを探索するメリットは薄いように思えた。

「結局あの電話ボックスについては、よくわからなかったのよね」

 後でコンに電話ボックスでの出来事について話したところ「それ隠しクエストや!」と怒られた。その後急いでみんなであの電話ボックスに向かったのだが、いくら受話器を耳に当てても、お金を入れても、あの不気味な声が響いてくることはなかった。「一応、内緒にしといた方がええな」ということで、この件は竜の雛のみの秘密となった。

「私としては、完全に忘却したいのだけれど」

 この世のものとは思えない声を思い出すだけで、今でもぞっとする。ドナルドとの交流によって、元々高かったホラー耐性が極限まで鍛え上げられていたヨハンでさえ、一瞬固まるほど恐ろしい声だった。

 というわけで、街のことは置いておいて、今日はフィールドの探索である。アマテラスシティの南側。
 不気味な木々と沼が一面に広がる沼地エリアにやってきた。所々に休憩場と言いたげな丸い岩場があるものの、その殆どは茶緑色に濁った水に覆われたエリアだった。

「もっもっ」

 その時だった。頭上のヒナドラが地面に飛び降りると、沼の方まで跳ねていき、水面をのぞき込んだ。

「入りたいの? 駄目よ汚いから」
「もっ~」
「あっ」

 ヨハンの忠告も聞かず、沼に飛び込むヒナドラ。

「もきゅ~」

 気持ちよさそうな顔で尾をバタバタさせているが、それが推進力になっていないのか、はたまた仕様か。少しも水上を進むことなく、ヒナドラはだんだんと沈んでいく。

「もっ!?」ブクブク

『ヒナドラが消滅しました』

「ヒナドラーっ!?」

 どうやら沼の底に体が沈んだらしく、ヒナドラのHPは0となって消滅してしまった。

「全く無茶して……こうなったら今日は――召喚獣召喚【イヌコロ】!」

 幾何学的な魔法陣から、白いフェンリルの幼体(子犬)が姿を現した。

「わふっ」

「うふふ、イヌコロ。今日は貴方と冒険しましょうか」

「わふっ!」

 ヨハンの言葉に頷いたイヌコロ。だが、何かに気が付いたように沼の淵まで駆け寄ると、底のほうを見ている。

「スキル【もの拾い】が発動したのね。その下に何かあるの……ってああああ!?」
「わふっ」

 イヌコロは近寄るヨハンを待つことなく沼にダイブし、底にあるアイテムを目指す。そして。

「わふっ!?」ブクブク

『イヌコロは消滅しました』

「イヌコロ-っ!?」

 短い間に、儚い命が二つ散った。

「……。……。……。自分でやるか」

 そう呟くと、ヨハンは自ら沼地に入り込む。【もの拾い】によって隠されたアイテムが見つかると、その場所は光るのだが沼地の底から光は届かない。

 適当に歩き回っていると、足が光に触れたのだろう。手元に宝箱が現れる。

「へぇ、【金の頁】か。見たことないから新素材ね。煙条Pへのお土産にしましょう」

 基本的にバチモン以外にそれほど興味を示さない習性を持つヨハン。探索やレベル上げでフィールドに出た際に【もの拾い】×10で入手した大量の素材は全て煙条Pに丸投げされる。

 煙条Pへと手渡された素材は彼の判断により様々なアイテムに生まれ変わったり、必要としているメンバーへと振り分けられるのだ。

 竜の雛はそうやって回っている。

「……あれ、随分早いねお姉ちゃん。もしかしてボク、時間間違えてた?」
「あら、こんにちわレンマちゃん。いいえ、時間通りよ」
「……ふぅ、それは良かったよ」

 それから30分。

 ヨハンが金の頁収集に飽きてきた頃、レンマが現れた。今日は一緒に沼地を探索する約束をしていたのだ。

「……沼地フィールド攻略の特訓?」

「まぁ素材集めと合わせてね。でも、これはちょっと剣士は戦えないわ。底の土がドロドロで、バランスがとれないもの」

 元陸上部、そして現在でも週一回のジムと風呂上がりのストレッチを欠かさないヨハンをしても、この場所でまともに歩くのはかなり厳しかった。

 とにかく足場が悪く、場所によって深さや土の柔らかさも違うのだ。さらに、立ち止まっていると、どんどん体が沈んでいく。

 下半身が沈むとまともに身動きができなくなり、全身が水の中に沈み酸素ゲージがなくなると即死。かなり理不尽である。レンマも沼地フィールドを試したことがあるのか、同意するように頷いた。

「……こんな場所を自分で作り出せるんだから、魔法使いの新スキルはかなり当たりだよね」

「でも、強いスキルを作ってはい終わり……ってわけでもないはずよ。カウンターになる対策スキルも、必ずあると思うの。私たちは、今日それを捜しましょう」

「……うん。ゼッカに教えてあげたら、喜ぶね」

 という訳で、二人の今日の目的は、ランキング上位を目指すゼッカのため、沼地フィールドに対抗できるようなスキルを発見することなのだ。

「……けど、ゼッカが居ないのは寂しいね。また、学校の友達と遊んでるんでしょ?」

 沼地を見つめながら、レンマが呟く。その口調はどこか拗ねているようだった。

「ええ。親友三人で集まるのは久々だから、きっと楽しいんでしょうね」

 先日、ゼッカはミュウという、かつて共にギルド【最果ての剣】を立ち上げた友人と再会し、仲直りすることができた。

 今は離れていた時間を取り戻すように、ギルティアを入れて三人で、毎日遊んでいる。

「ねぇ。ゼッカ、竜の雛を辞めたりしないよね? 竜の雛を抜けて、あの三人で新しいギルドを作るなんて、言わないよね?」

「それは……」

 寂しそうなレンマに、ヨハンは「ありえない」とは言えなかった。実際、その可能性はゼロではないのだから。だから、ヨハンにできるのは、その時が来てもいいように、レンマを諭すことだけだった。

「もしそうなったとしても。それを悲しんじゃいけないわ、レンマちゃん」

「でも……」

「もしあの子たちが新しいギルドを作るために竜の雛を去るなら、それは別れではなく、旅立ちなんだから。応援してあげなくちゃいけないわ」

「……うぅ」

「わからない?」

「わかるよ……うん。そうだね。ちょっと、寂しいけど」

「良い子ねレンマちゃん。とっても良い子……あら?」

 その時だった。メッセージを受信したヨハンはメニューを開く。そして、その内容を確認すると、鎧の奥でそっと微笑んだ。

「ほら、見てみてレンマちゃん」

 そして、受信されたメッセージをレンマにも見せる。

「……ゼッカから? フフ。楽しそう」

 レンマはそのメッセージを見て、思わず笑ってしまう。

 それは、ゼッカからの、写真付きのメッセージ。写真では召喚石を手に入れて満面の笑みのゼッカと、その後ろにうんざりしたような表情のギルティアとミュウが映っていた。

『ヨハンさん!

先ほど新フィールドで新しい召喚石を発見しました!!

ので!

竜の雛の召喚師の分! 30個!!!

今から全力で集めます!!!!!!!! 

後でお持ちしますので褒めてくださいね~。ヾ(。>v<。)ノ゛

♡ゼッカより♡』

補足 沼地フィールドについて

ComicWalker - 人気マンガが無料で読める!  16 Posts 1 Pocketお前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそう...https:/ ...

続きを見る

スポンサーリンク

記事スライドショー

2023/8/9

【予定】今後の投稿予定

いよいよ8月……も半ば、明後日からお盆という時期に相成った。 前回の記事…というかコミックス3巻の発売からすでに一か月経っていると考えると時間の経過が恐ろしい。 コミックスを購入してくれた方はありがとう! この記事ではこの一か月間の間に挑戦したことと、お盆以降の予定について報告したい。 7月~8月 挑戦したこと 新作を投稿する カクヨム - 「書ける、読める、伝えられる」新しいWeb小説サイト陰に生きる最強忍者さん、ダンジョンで美少女配信者を助けてバズってしまい無事忍...https://kakuyomu ...

ReadMore

2023/7/12

【7月14日発売】お前のような初心者がいるか! コミカライズ3巻告知用ページ【告知】

各種Webサイト様で連載中のお前のような初心者がいるか!のコミックス3巻が7月14日発売ということで、お知らせです。 通販サイトなどでは予約が始まっているので、まだという方は是非! お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです 3 posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 可愛らしく書いていただいたゼッカが目印! 内容としましては書籍版準拠で海賊王レイド後半~ドナルド登場あたりまでとなっております。 どこも面白く漫画としてまとめていただいてますので、是 ...

ReadMore

2023/4/16

【告知】引っ越しと新作がちょっといい感じの話

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、その後すぐに執筆を開始。 普段は6万字~10万字のストックを作ってから投稿を開始するんだけど今回は3話分、6000文字程度で投稿を開始。 超見切り発車で完成度は微妙。さらにはストックがないから殆ど投稿5分前に書き上がったのをそのまま出荷みたいな自転車操業をしている。 ただその分、今まで考えていた「読者受け」と ...

ReadMore

no image

2023/4/12

【旧】第139話 追加メンバーたち

 メンバー募集当日の昼。集合時間の一時間前。  竜の雛のミーティングルームには、見慣れない顔が揃っていた。  対外的にメンバー募集を発表した竜の雛。希望者には軽い面接の後にギルドに加入してもらう予定だが、現メンバーの顔見知りには、特に面接もなく加入してもらうことになっている。そんな友人経由の希望者には、一般の集合時間よりも早めに集まってもらっていた。 「ヨハンさん。私の友達二人をご紹介します!」  改まってゼッカがヨハンの前に連れてきたのは二人の女子高生プレイヤーだ。  一人はヨハンもよく知る人物、元【最 ...

ReadMore

2023/4/2

【無料】小説版 お前のような初心者がいるか! が無料で読めるお話

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知らなかった。 昨日寝る前に偶然発見したのでこちらでもご報告しておきたいと思う。 Kindle unlimitedを30日間無料で利用する   無料読み放題って作者は大丈夫なの? 「無料で読み放題とか大丈夫なのか?」と思われるだろうが心配ない。 というのも無料でもダウンロードされれば電子書籍が一冊買われたのと変わ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

瀧岡くるじ

台東区在住の社畜兼業作家。 小学生の頃にデジモン、遊戯王にハマり大きな影響を受ける。中学時代は非オタとして過ごしてきたが高2でラノベを知り今ではフィギュアに憑りつかれたオタク。 大学卒業後はサラリーマンとして生きてきたがコロナで仕事が暇になったのをきっかけに小説家になろうにて連載開始。 2021年にカドカワBOOKSより『お前のような初心者がいるか!』を出版し作家デビュー。 嫌いなものは会社と通勤。 更新情報や購入物を日々ツイッターで呟いております。

おすすめ記事はコチラ

1

タイトルの通り、お前のような初心者がいるか! の小説版第1巻がAmazonのキンドルアンリミテッドで無料で読めるようになったので報告したい。 前々からお話は頂いていたんだけど具体的な開始時期とかは知ら ...

2

こんばんわ。  先日の記事で新作を投稿したとお知らせしたが、まぁ望むような結果を出せずに投稿を取りやめた。 1月末から二ヶ月間コツコツと準備してきたから相当凹んだんだけど、逆に謎のパワーが沸いてきて、 ...

-【旧】お前のような初心者がいるか!